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涙のリクエスト
2部分:第二章
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第二章

 その時のことは今でも覚えている。楽しい時間だった。けれど今思うとそれはすぐに終わった。本当に笑ってしまう位にすぐに、いきなり終わった。
「さよなら」
 ついこの前のことだった。俯いて申し訳なさそうなあいつにこう言われた。
「御免なさい」
「そうかよ」
 何が言いたいのか、何があったのかはすぐに察しがついた。俺は一言で終わらせた。
「じゃあな」
「それだけでいいの?」
「言っても仕方ないだろ」
 俺はこうあいつに返した。
「そうだろ?じゃあいいさ」
「そう。許してくれるの」
「許すも何もないさ」
 俺はまた言ってやった。
「御前はそうするしかないんだからな」
「そう。それじゃあ」
「楽しくやれよ」
 微笑みを作って言ってやった。
「二人でな」
「ええ」
 ここまで話して終わりだった。あいつは別に好きになった彼氏のところに行った。さよならで終わった。酷い仕打ちを受けたと思うがそれでも俺は受け入れた。
 それで今ここにいる。胸にある銀のロケットがある。中にはあいつの写真が入っている。俺がペアで買ったやつで多分今もあいつの胸にこれと同じものがある。
 けれど今そこには俺の写真はない。別の奴の写真がある。俺はそのことも思った。
「いいさ」
 俺は歩きながら呟いた。
「それでさ」
 曲はかかっている。その曲を聴きながら一人歩きつつ呟いていた。夜道には相変わらず誰もいない。
「あいつと抱き合いながら俺のことでも笑ってればいいさ」
 こんな自嘲めかした言葉を呟きながら浜辺に出た。ここも昼の賑わいはなくてただ波音だけが聞こえる。黒い海から時々白い波が見えるだけだった。
 俺はそこで胸のロケットを取って。右手で海に向かって投げ込んだ。
「もうな。これでな」
 投げ込んだから笑ってやった。動きは曲に合わせていた。
「完全に終わりってわけだ」
 笑いながらここでも呟いた。
「この話はな」
 曲はまだかかっている。今度はその曲で口笛を吹いた。
 口笛を吹きながらその真っ黒い海を見る。見ているとふと未練も湧いてきた。
 それがどうにも歯がゆかったけれど。それでも俺はまた呟いた。
「ああ。あれだな」
 その歯がゆさに苦笑いしながらも呟き続けた。
「若しも振られた時はやってくれよ」
 俺は言った。
「この歌、ダイヤルしてくれよ」
 そうすれば何をするのか。それだった。
「御前迎えに行くからな」
 実はこの歌はそんな歌だった。そうした意味も込めてリクエストしたのも事実だ。 
 けれどこんなことは有り得ないとわかっていた。だから苦笑いで済ませた。曲が終わると俺はそれで浜辺を後にした。そこでまた煙草を出して吸って。
「帰るか」
 最後にこう言って家に帰った。誰もいない一人だけの部屋に
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