暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのはStrikerS 〜困った時の機械ネコ〜
第2章 『ネコは三月を』
第33話 『なにか変か』
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ると、先程まで何も書かれていなかった白いページに文字や挿絵が浮き上がってくる。内容は想像していたものと違い、文字は細い草書体で書かれ、挿絵は武器武具だけにとどまらず、魔法陣の構成、当時主流とされていた魔法原理、その構造に至った思想等が分かりやすく書かれている。
シグナムはしばらくの間、読み
耽
(
ふけ
)
った。
「……そろそろ、私は仕事に戻りますが、お持ち帰りになられますか?」
余程没頭していたのか、コタロウが昼食を取っていたことにも気付かず、時刻をみるとそろそろ休憩も終わる時間に差し掛かっていた。
「その眼鏡はスペアがありますので、どうぞお持ちくださって構いません」
「……む、悪いな」
「構いません。私以外の方が読まれても問題がないことに、少し安心しました」
ぱたりと本を閉じ部屋を出ようとしたとき、ドアが開いたままの状態であることに彼女は気付いた。
「私は開けたままにしてしまったか?」
「いえ、女性を自室に入れる場合はドアは常に開けたままにしているのです。ロマノワ二等陸佐が言うには『異性と部屋で二人きりになる場合は四本の足が地につき、常にドアは開けておくこと』とのことで」
所謂
(
いわゆる
)
、官位によらない異性間のマナーの1つだという。もちろん例外もあるが。
寮を出ると雨は幾分か弱まったものの、まだ降り続いており、お互いに傘を差して歩き出した。自分より背が低いせいか、彼の差す傘は持ち主の頭をかくし、胸から下しかシグナムは確認することができなかった。
不意に、彼女は首を傾げて傘の下を覗き込んだ。
「……雨粒が跳ね返りましたか?」
「あ、いや、大丈夫だ。問題ない」
近くを歩きすぎたかと眉を寄せる寝ぼけ目と目が合うと、シグナムは居た堪れない気持ちになり、ぎこちなくまた前を向いた。
僅かに緊張した心持を振り払い、落ち着きを取り戻す。
(いつもの目だな)
何故覗きこむようなことをしたのだろうかとは考えなかった。
ただ、普段の彼であることに安心したのはシグナム自身も気付いていた。
そして、隊舎と寮の中間地点まで来たとき、
「
コ
(
・
)
タ
(
・
)
ロ
(
・
)
ウ
(
・
)
」
「はい」
「二杯目に砂糖はいらない」
相手の返事を聞くことなく、シグナムは彼と別れた。
△▽△▽△▽△▽△▽
『…………』
夕食の後、小時間空けて夜間訓練を始める前、一番近くにいる隊長陣たちがシグナムの変化に気付く。
足を組み、銀縁の半月眼鏡をかけながら、テーブルの上に広げた小さな本に目を落とす彼女はいつもの気高さに若干の淑やかさを身に纏っていた。左手は本をやさしく固定し、右手
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