暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのはStrikerS 〜困った時の機械ネコ〜
第2章 『ネコは三月を』
第31話 『太陽と月』
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思考に余裕を見出し、そのまま深呼吸をしようとする。
 しかし、それは息を吐こうとしたところで思い切り両手で口を押さえた。


(こんな、か、顔の近いとこで深呼吸!? 絶対、できひん!)


 彼のほうを向いていないのであればいざ知らず、向いている今、普通に呼吸をするのでさえ恥ずかしいことに、はやては気付いたのだ。
 とりあえず、呼吸をいつもより慎重にさせることで事なきを得たが、それでも彼の唄と、髪の間を掻き分けながら指の腹を這わせるような撫で方は止まらなかった。


(……ぅぅ)


 思考や感情は頭脳で行なわれているのにも関わらず、胸は激しく鼓動し、それが本当なのかと疑いたくなる。相手がこの鼓動に気付いてしまうのではないかというくらい、自分の耳には自分の心臓の音が聞こえた。


「今、ここにいる君は果たして夢なのか、現実なのか」
「…………」


 ひとまず、目を閉じて自分の心臓を押さえつけることに集中するが、周りに何も見えなくなると、彼の手と、呼吸によって上下する胸に余計意識がいってしまう。
 だが、さわり、さわりと自分の髪に触れる手はとてもあたたかく、撫でられる回数が増えれば増えるほど、何故か落ち着きを取り戻していった。


(ヴィータたちは、こんな感じやったんかなぁ)


 最近、ヴィータやリイン、ザフィーラを撫でることは滅多に減り、逆にはやては撫でられるのはこんな気分なのかと思う。言い知れぬ不思議な感じだ。始めは驚きはしたものの、今はそんなことはなく、なすがままにされている自分に驚くほどである。
 それでも、唄には終わりがあり、


「僕の目が覚めても、それが夢じゃなく、君が近くにいれば……いいな」
「…………」


 手の動きも止まる。
 その頃には、はやては完全に落ち着きを取り戻し、ゆっくりと目を開く。


「――ッ!!」


 彼は微笑んでいた。






△▽△▽△▽△▽△▽






「……ん」


 コタロウは目覚めた。
 視界はぼやけ、何度か瞬きし、最初に入ってきたのが天井だとわかると、開いた目を再び細くし、


(医務室?)


 起き上がり、今いる場所を把握する。
 次に何故ここにいるのかを、思い返した。


(昼食前に傘の試験運転、残り5分で試験項目の変更をして……)


 顎に手を当てて、目を閉じ、しばらく考えた後、自分の最後の言葉を思い出す。


(そうか、『ダメです』と言ったきり記憶が無いということは、そこで気絶したのか。それで誰かが医務室に運んだ……重かったろうな)


 胸が痛くないことに不思議の思うも、シャマルがなにか処置をしたのだろうと決定付け、ここまで
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