暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのはStrikerS 〜困った時の機械ネコ〜
第2章 『ネコは三月を』
第31話 『太陽と月』
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、月を思わせる歌詞で、まだ鼓動も早く、顔に熱を感じていても、身体中の強張(こわば)りはとれていくのが分かった。


「……私はあなたを、愛しています」
「…………」


 その言葉を最後に手の動きも止まり、また静かな間が流れる。
 そこで初めて、コタロウの静かすぎる寝息と心音が自分の耳に入ってきた。


(終わっ……た?)


 だが、そこでフェイトは再び驚く。
 彼の方を向いておらず、ただ片耳を胸元に当てている自分が、唄が終わっても自ら起き上がろうとしないのだ。
 別に、彼に力や魔力で強制的に押さえつけられているわけではない。


(……あったかいな)


 頭に乗せられている彼の手がほんのりとあたたかい。
 フェイトは少し触ってみたい衝動に駆られた。頭の位置は変えずに、そろり、そろりと手の位置を探るように自分の手をそのあたたかみのあるほうへ持っていく。
 そして、自分の人差し指が彼の手のどこかに触れる。
 その時だった。


『失礼します』
「――ッ!!」


 入室のブザー――医務室は他の部屋とは違い、患者を驚かせないメロディ――が鳴り、エリオとキャロが入ってきた。彼女はドアが開く前に乗せられているコタロウの手を払わずに、両手をベッドの端に置いて勢い良く立ち上がった。その勢いで彼の手がぱたりと自身の胸の上に落ちる。


「フェイトさん、大丈夫ですか?」
「訓練中だったんですけど、今、休憩時間で……」


 午後の訓練途中の休憩時間を使って、なのはに了承を得て、様子を見に来たというのだ。それほど医務室へ歩く疲労困憊したフェイトの姿は、痛々しかったらしい。


「あの、やっぱりもう少し横になっていたほうが……」
「顔、赤いです」
「そ、そう?」


 フェイトの頬は上気して、さらに髪がすこし乱れているせいか風邪を引いているように見える。疲労がよく風邪につながることを知らなくても、今の彼女が心配を助長させる状態であることは手に取るように分かるからだ。


「だ、大丈夫、大丈夫。心配してくれてありがとう、エリオ、キャロ」
「なら、いいんですが……」


 訝しむ2人に彼女はにこりと微笑むと、それ以上彼らは自分に訊ねることはなく、その奥にいるコタロウに目がいく。


「コタロウさんは大丈夫なんでしょうか?」
「へ? あ、うん……今は、ぐっすり眠ってるみたい」


 フェイトはさっきの勢いに任せた飛び上がりで、起こしてしまったのだろうかとおずおず後ろを向くと、特に変わることなくコタロウは寝息を立てていた。


「そ、それじゃあ、コタロウさん起こしちゃうかもしれないから、出ようか?」
「フェイトさん、あの、本当にお体のほうは……」

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