暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのはStrikerS 〜困った時の機械ネコ〜
第1章 『ネコの手も』
第24話 『首肯、凪の如し』
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かないところに)


 それは久しぶりに会った時の違和感からくる偶然の要素を多く含んだものかもしれない。けれど、例えそれが発端だとしても、今の彼女には自分の納得を後押しする何物でもなかった。


「それで、それが実は勘違いだったらどうしようと思って、何日か考えたんだけど……本当にごめん」


 ユーノは考えても答えが出ることはなく、連絡をすれば答えはすぐにわかると分かってはいたものの、聞くべきかどうか数日悩み、自分の精神的安定も込めて聞くことにしたのだと吐露する。


(……心配しているのが伝わってくるよ。でも……)


 ゆっくりとなのはは目を閉じて、口を結んだ。その後、眉を寄せて顎を引き、思い切り肺に溜めこんだ息を吐きだす。


「私のことを心配して?」


 きちんと相手の思いを正直に聞いてみた。少しでも彼の今の心を知りたかったのだ。


「あ、いや……うん」


 モニタの向こう側の彼は否定するしぐさを僅かに見せたが、すぐに落ち着き、目を閉じているなのはのほうを向いて頷いた。


「……ありがとう」
「なのは?」


 彼女は薄く眼を開いてもユーノのほうを向くことはなく、地面に目を落としたまま頷く。


「うん。その通りだよ。私、大丈夫じゃない。私ね――」
「あ、ちょっとまって」


 今の感情を素直に伝えようとするなのはに、ユーノは両手を前に出してそれを止める。


「ユーノ、君?」


 彼は通信機能のうち映像通信だけを切断し、音声だけにする。


「これで大丈夫」
「え、と……」
「僕は頷くことしかできないから」
「……ふぇ?」
「なのはが泣いても、僕は近くにいないから何もできないんだよ」


 気づかぬうちに、顔をあげた彼女の目じりには涙が溜まり始めていた。ユーノはモニタを閉じる前にすでにその状態であったとは言わなかった。


「君の心を軽くすることしかできない」
「…………」
「頑張れとは言わないよ。なのはは強いから。だから、僕はなのはの声に頷くだけにするよ」


 ユーノが声柔らかに「どうぞ」となのはの心にドアを取りつけて、ドアノブを引くと、そろりそろりと霞が外に出てきた。


「う、あう。私ね、ひどいことしちゃった。えと、ね……」
「……うん……うん」


 それから涙声のなのはの言葉に、(なぐさ)める言葉もかけなければ、同情する言葉もかけず、ユーノはただ頷くことに徹した。
 彼女は自分の想い、後悔を心から出すたびに、渦巻く気流が凪がれていくのを実感する。






「……もう、大丈夫、だよ。ユーノ君」


 自然に流れる涙に抵抗しなかったせいか何度かしゃっくりをした
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