暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのはStrikerS 〜困った時の機械ネコ〜
第1章 『ネコの手も』
第20話 『彷徨、鳳の如し』
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ちも苦笑いである。
「すんません、手伝わせに行かせてしまいました」
彼が言うに、彼女たちが着替え初めて5分ほど経過したときに、後ろのほうで会場設営の荷物を運ぶ搬入があり、そこの現場長がコタロウに目を付けたのだ。
コタロウはパイロット用のつなぎではなく、作業用つなぎである。
それだけでは連れて行かれることはないかと思うが、その現場長はかれの服のよれ具合から人物を判断して呼び寄せ、話し合った。
のちに、ヴァイスに念話が入り、すこし手伝いに行きますと報告――なにかあればすぐに戻るを前提に――してホテルの裏口から入って行ったという。
「え〜〜」
「すいません。特に現場を離れるわけでもありませんし、指令があるときはこちらを優先させるといってたもんで……」
「う〜う〜」
訴えるようにヴァイスに顔を近づけて足踏みするシャマルに彼は平謝りすることしかできず、ぺこぺこと謝っていた。
それを見て、なのはとフェイトは「はぁ」と息を吐き、はやては手のひらで顔を
扇
(
あお
)
いで「ふぅ」と自分の体温を下げた。
△▽△▽△▽△▽△▽
なのはたち隊長陣はアグスタ内の警備を見る限り、オークション会場内は特に厳重に警備がなされ、通常起こり得る
障害
(
トラブル
)
は起こり得そうにないことを確認する。
「んでな、自分で指示すればいいだけなんやけど」
「……うん」
「なんで、コタロウさん普通に手伝ってるん?」
今、なのはとはやてたち2人は一緒に
居
(
お
)
り、オークション会場の舞台上でコロコロといくつものイスを重ねてキャスターで運ぶコタロウが目に入った。
彼は舞台の
下手
(
しもて
)
と
上手
(
かみて
)
に2脚ずつイスを配置すると、舞台の中央へ向かい、べたりと伏せて、イスの角度が中央を向いているかを確かめている。
しかし、そんなことは最前線で過ごしてきた彼女たちにはわかるはずもなく、コタロウがイスの配置を直し、後ろに立って
布巾
(
ふきん
)
に包んだナットを先ほどまでいた舞台の中央に放り投げ、耳を澄ませたところで、彼がイスに座った人間に一番よく聞こえる角度と位置を確かめているのがわかったくらいである。
[…………]
はやては念話をしようとして、思いとどまり、ジト目で
手摺
(
てすり
)
に腕をついて顎を乗っけた。
「コタロウさん、呼ぶ?」
「ううん。ええわ」
自分に対してなのか、相手に対してなのか分からない、馬鹿らしいという表情のはやてを見て、
(なんだろう? ふてくされてる?)
なのはもまた、フェイトと同様に故郷から戻ってからのみんなの表情の移り変わりに気付き、もう一度両親の言葉を思い出す。
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