暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのはStrikerS 〜困った時の機械ネコ〜
第1章 『ネコの手も』
第17話 『言えばいいのに』
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「……はい」


 コタロウは肩まで――鎖骨が見えるか見えない程度――浸かっており、今は寝ぼけ目以上に目を細くし、近づくエリオから見ても気持ち良さそうに見えていた。
 少年が彼を見下ろせる位置まで近づくと、相手は寝ぼけ目になり、顔を上げ、エリオは一言断ってから彼の右横にとぷんと浸かる。


「た、助かりました」
「うん?」


 大きく湯気ごと肺に空気を入れると入れた以上に息を吐いた。


「あ、いえ、こちらの話です」
「……そう」


 エリオは視線をコタロウからそらし、正面を向くと、それ以上お互い何もしゃべらなかった。


『…………』


 時間にしては2分となかったが、エリオはこちらが何も言わなければ向こうは何も言わないことをここ最近のコタロウをみて把握していた。


『…………』

(どうしよう)


 エリオは六課に配属されてから、これだけお互い近い位置にいるのに無言でいたことが考えても思い当たることがなかった。


(なにか、話題)


 そう考えている間も、隣の男は何もしゃべらず、細い目でいると、


(あ、そういえば)


 少年は先程のコテージでの出来事について、お礼を言うのを忘れていたのを思い出した。
 それに『傘』についても聞きたいことがあると考える。


(お礼を言って、その後、『傘』について話してみよう)


 大体の場合、この様な話題のつなぎを考えるのは大人の役目であったりするが、コタロウの場合はほぼないに等しい。
 エリオは十分話題の流れを頭の中で整理した後、いざ話しかけようとおずおずとコタロウのほうを向くが、


「…………」


 声が出なかった。
 それはただ単に、相手が気持ち良さそうに見えただけではない。
 普段見るコタロウは目深に帽子を被っているためわからなかったが、髪は女性に負けないくらいのつやつやとした濡烏色(ぬれからす)で、毛先はところどころ跳ね上がり、その弧を描いている部分は水分で鈍く光っていた。
 垂れ下がっている髪の隙間から見える(まつげ)の長さは横顔のせいかよく分かり、ぼんやりと細い目の中にある黒い瞳は確認できないくらいずっと遠くを見ているようである。
 そして乳白色の湯とその湯気がコタロウの認識を鈍らせ、そこからゆらりと消えても、疑問に思う人はここにはいないかもしれないと思わずにはいられなかった。
 それくらい今の彼は妖艶に見えるのだ。
 肌はほんのりと上気した桜色(さくらいろ)で、大人であるのにもかかわらず、幼さが若干残り、彼のどちらかといえば男性よりの中性的な顔が尚のことそれを引き立たせていた。


「……ん。なに?」
「え、あ、い、いいいえ! 別に、何も
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