暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのはStrikerS 〜困った時の機械ネコ〜
第1章 『ネコの手も』
第9話 『お好きなほう』 Cパート
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前は(まこと)に素晴らしき竜召喚士よ」
「…………」


 2人の表情から褒められているわけではないとキャロは無言を通していた。
 また少し間があいた後、酋長は努めて表情に感情を持たぬよう顔を上げる。


「じゃが、強すぎる力は『(わざわ)い』と『(あらそ)い』しか生まぬ」


 キャロはまだ、『災い』、『争い』という意味を知らず、ただ彼の『選択させられた』大人の顔にどきりと心臓を弾ませた。


「すまんなぁ、お前をこれ以上この里へ置くわけにはいかんのじゃ」


 酋長の後ろにいる女性も気づけば同じ表情になっており、またどきりとする。


(置くわけにはいかない?)


 彼女には書割のなかから『普通』であった“自分の居場所”を失い、実は『特別』であった“白銀の飛竜”、“黒き火竜”だけが残った。






△▽△▽△▽△▽△▽







 知識を得るには何も本だけから得られるものではなく経験によって得ることもある。
 キャロは里を追放され、時空管理局に引き取られてから自分の制御できない力が酋長の言う『災い』と『争い』の意味することを知り、自分の竜召喚という力そのものが『危うさ』と『怖さ』を秘めていることも知った。
 自分の周りにいる自分を管理する人たちが自分を管理できないでいるのが何よりもそれを理解させていた。
 彼女は自分の目の前で白衣を着た男性が持っているカルテをぺらぺらと(めく)り首を横に振るのを一つの合図であるということも知っていた。


(これは数えちゃだめだ)


 別の施設へ移る合図の回数を数えるのを必死で我慢していた。
 彼女は『普通』に別の施設へ行く。
 彼女は『普通』に白衣を着た男性――あるいは女性――が1枚のカルテを読んでいるのを見る。
 彼女は『普通』に自分が調べられる対象になる。
 彼女は『普通』にそのカルテが一定枚数まで溜まり、白衣を着た人間が首を横に振るのを見る。
 これを幾度と無く繰り返していた。
 期間にしては短く、移った場所の数も少なかったが、気づき始めると幾度にも続いているように彼女は思う。
 そして、3年後の彼女は今日の『特別』を昨日のことのように覚えている。
 それは深々(しんしん)と雪が降っている日であった。


「――確かに、(すさ)まじい能力を持ってはいるんですが、制御がろくにできないんですよ」


 男性は一人の女性にキャロの能力について話していた。


「竜召喚だってこの子を守ろうとする竜が勝手に暴れまわるだけで、とてもじゃないけどまともな部隊でなんて働けませんよ」


 女性は男性の溜息交じりの説明に俯いている少女の震えを見逃さない。



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