第一章
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第一章
素直にアイムソーリー
「えっ!?」
僕は彼女の今の言葉に思わず声をあげた。
「今何て?」
「だから帰るの」
彼女は口喧嘩の末にこんなことを言い出したのだ。
「一人でね」
「一人でって」
「帰るって言ったら帰るの」
強情に言ってきた。
「もうね。一人でね」
「帰るって。何でそんなことを」
「いいから降ろして」
有無を言わせぬ口調だった。
「降ろしてよ、家に帰るから」
「家に帰るっていっても」
今ははじめてドライブする場所だ。それでこんなことを言ってもだった。何を言っているんだまた、これが今僕が心の中で思って呟いた言葉だった。
「どうやって帰るつもりなんだよ」
「そんなことはどうでもいいの」
これこそまさに暴論だと思った。
「だから早く」
「歩いて家に帰るっていうのかい」
「そうよ」
助手席から口を尖らせて言ってきた。
「わかったわね。それじゃあ」
「ああ、わかったよ」
呆れ果てながらもその言葉に応えた。
「帰るんだね」
「そうよ、帰るの」
ドライブの帰り道のところで下らない理由で口論してその結果こんな状況になった。僕としても内心何て下らないと思いながらも応えていた。
そして。僕は遂に助手席のロックを外した。そのうえで彼女に言った。
「これでいいんだね」
「そうよ、それじゃあね」
「全く」
こう言って彼女が出て行くのを見てだ。溜息と一緒に扉を閉めた。
見れば俯いた顔で唇を噛んでそこに立っている。やれやれと思いながらそれで車のエンジンをかけるとだった。
彼女の目に涙が滲んできた。そして泣き出してきた。そのまま大声で泣きだした。
その彼女を見て僕は助手席の扉を開けた。それから声をかけた。
「あのさ」
「何よ」
「中に入る?」
こう声をかけた。
「車の中に」
「車の中にって」
「悪かったよ」
僕からの言葉だった。
「だからさ。仲直りしよう」
「仲直り?」
「そう、仲直りしよう」
こう彼女に言った。
「君さえよかったら」
「仲直りって」
「しよう」
僕から謝った。実は帰り道なんて全く知らない。その彼女への言葉だ。
「それでいいよね」
「・・・・・・ええ」
ここで彼女も遂に頷いてきた。
「それじゃあ」
「入って」
あらためて車の中に入るように言った。
「帰ろう、家にね」
「ええ、それじゃあ」
こうしてまだ泣いている彼女を車の中に入れて出発した。これはいつものことだ。
別の日は留守電に。怒った声が入っていた。
その怒った声を聞いてまた溜息だった。
「また喧嘩か」
ここでもやれやれだった。
「本当に。どうなのかな」
そうは言ってもだった。
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