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誰が為に球は飛ぶ
焦がれる夏
弐拾陸 精一杯の夢
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すね。川越成章打線が様子を見てきたから初回はしのぎましたけど、そう長くは……」
「その通りだ。真矢君、君が指揮をとってみるかね?おい大坪、準備しておけ。」
「はい!」



監督の冬月と、スコアラーの真矢との会話の後に、指示が出される。この光景は是礼ベンチの日常となっていた。是礼のスコアラーは、冬月の話し相手という側面が強い。静かな語り口の割には、冬月はお喋り好きな老人である。他人に語りかける事で、自分の考えを整理しているようにも見える。

「監督さぁ……」
「ん?」

冬月の指示でブルペンに走った大坪が、一緒に来た控え捕手にヒソヒソと話しかける。

「スコアラーが魚住から真矢ちゃんになってから、明らかデレちゃってるよな?」
「おい、それ言うなって」

二人してクスクスと笑う。
その時、フィールドからは甲高い金属音が響いてきた。


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「あーあ、結局加藤は3回でお役御免かぁ」

スタンドで青葉が残念がる。
是礼学館先発の加藤と友人だったらしい。
加藤は3回で4失点を喫し、4回のマウンドには2番手投手が上がる。スコアは4-4と、序盤から試合が大きく動いていた。
交代した大坪の投球にも、目を見張るものは感じられない。実際、ここまで強打で勝ち上がってきた川越成章打線は難なくその投球を捉える。

「打線はええけどのぉ、投手は大した事ないんとちゃうか?小暮の方がエエやんけ。」
「でも加藤は背番号20、今投げてる大坪は背番号11だぞ?エースじゃない」
「でもエースが今投げてないゆう事は、エースも大した事ないんちゃうん?」

藤次が首を傾げていると、煙草を外で吸ってきた加持がネルフナインの下に戻ってきた。

「まぁ、半分正解だな鈴原。実際是礼の投手力は大した事はない。でもさすがにエースは小暮くらいの球は投げるな。是礼の冬月監督は準決勝では中々エースは使わないんだ。」
「そらまた、何で?」
「決勝で負けたら結局甲子園はないからな。是礼みたいな名門にとっちゃ、決勝で負けるのも準決で負けるのも一緒だよ。」

藤次の隣に腰掛けた加持は是礼ベンチを見ると、目を丸くしてその身を乗り出した。

「是礼、今は女子マネージャーなんてもん採ってやがるのか!?」
「あ、そういえば加持先生是礼のOBでしたね」
「俺の時は男のむっさいマネージャーしか居なかったんだぞ?野球部なんて、女子禁制の硬派の集団だったってのに…」
「なのに何でこんな軟派な人に育っちゃったのかにゃ〜?」
「う、うるさいぞ真理!」

真理にツッコまれた加持に、ネルフナイン皆が笑った。


ーーーーーーーーーーーーーー



「あ〜、よく寝たァ」

試合終了後、すぐに酸素カプセルに入った
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