焦がれる夏
弐拾陸 精一杯の夢
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決勝で負けてるし。でも、層の厚さと全体的な打力なら是礼の方が前評判も上だし、事実ここまで5試合でホームラン4本打って勝ち進んできてる。」
健介はため息をついた。
「やっぱ最後までタフな勝負になるよなぁ。優勝するってのは大変だぁ……」
「でも、ここまで勝ち上がってこれたんだから明日も大丈夫だよ〜。にゃはは」
真理は無邪気に笑う。
その場の皆が、その気まぐれそうな笑いに、つられて笑った。
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「いつも通りやるだけだ!勝つぞ!」
「「おおお!!」」
「スコアラー、お前もな!」
是礼ナインは試合開始直前に円陣を組んでいた。その中心で、均整のとれた体格をした主将が声をかけていた。
「はい!」
声をかけられた制服姿のスコアラーが、高い声で返事をする。ショートカットの髪、少し幼な目の顔つき。円陣の中心に居た主将と、その顔はそっくりだった。
「おうおう、今日の真矢ちゃんもかわいーなー」
「バカ、試合前だぞ。引き締めろ。」
集合準備の列の先頭でからかわれているのは、是礼学館野球部主将の伊吹琢磨。
スコアラーを務めている女生徒は、伊吹真矢という。
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三遊間にゴロが飛ぶ。
ショートの琢磨が低い姿勢のまま走り、グラブを伸ばして打球をもぎ取る。そこから、体を一塁側に返しながらのランニングスロー。
一塁手のミットに、糸をひくような送球が収まり、一回表がチェンジとなる。
「あの距離をランニングスローで投げられるって、凄い肩だなぁ。」
スタンドの敬太が驚嘆の声を上げる。
「1年からレギュラーの伊吹琢磨。去年1年間はサッパリだったのに、ここに来て復調して、ドラフト候補にも挙がってきてる。」
健介は少し呆れたような顔をしている。
直後、是礼は先頭の琢磨が弾丸ライナーのスリーベースでチャンスを作り、犠牲フライであっさり一点を先制した。
「ソツがないな。」
日向がメモを取っている間に、三番打者が倒れ、打席にラグビー選手のような体格をした、縦にも横にも大きな四番打者が入る。
「カァーーン!」
懐大きく球を呼び込み、ストライクゾーンを飲み込むようなスイングから放たれた打球は、レフトスタンドへと雄大な放物線を描く。
「四番の分田はこれが大会三本目…」
日向は苦笑いした。
「こりゃ、普通に強いぞ。」
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「今日も先制、か。」
「…二点ではまだ心許ないですね。今日の先発は1年の加藤君ですし。」
「そういう事だな。…さて、何回まで持つと思うかね?」
「初回を見た限り、生命線のスライダーを投げる時に肘が下がって高めに抜けてま
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