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三章
始動
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くすぐったそうに羽に顔をうずめ、身震いする鳥の魔物。
名前はグリフィンという。
愛でるように顔を近づけて嘴を撫でる。それから顔を撫で、抱きしめる。
『…ふぅ、頼むぞ?』
呟くと魔物は、クルル、と小さく鳴いた。
『俺』が見据える先には桃色が揺れて、緑色が頼りなくふらつく。
その幾らか先には魔物が跳ねている。
『剣はその掌の中だ。ディセンダー』
掴むことを望め。
振るうことを誇れ。
迷うことなく走らせろ。
閃く一陣の輝きは刃となり、稲妻となり、駆ける。
ただ信じて、武器を、力を信じて。
緑の少女はジッと桃色の少女の剣閃を見つめている。
『学んでるのか。意外と見ててわかるもんだな』
いつもディセンダーには驚かされる。
俺の剣は幾億の世界に汚れて朽ちている。
血と罪と、あとは痛みと重みで、ズタズタになってしまってる。
それでも俺は、まだここにいる。
まだ俺は俺を求められている。
俺の記憶がここにあるから。
あの小さな英雄の頭の中には記憶が空っぽなのとは違い、俺には祈りが、思いが。
穢れが、絶望が溢れている。
それが俺を俺でいさせる。
俺を破壊を招くものとして認めさせる。
何故俺だけ、浄化してくれない。
『…マーテル』
貴女は何故、俺を消してくれない。
チッ…、舌打ちをすると、魔物がクル、と先ほどより小さく声を発した。
なんでもないと答えてから、笑う。
『行こうか』
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