ターン33 冥府の姫と『白き龍』
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『もうやめてくれ。君は悪くないのはわかってる、これは俺の、大人のわがままだ。それもわかってる。だけど頼む、もうやめてくれ』
どうして、そんなに苦しそうな顔をするのって。
『君は絶対に悪くない。ただ……ただ、俺が弱いんだ。俺はこれ以上、君の視線に耐えられない』
ねえ、待ってよ。お願いだから返事をして、だって。
『なあ兄さん、俺が一体何をしたっていうんだ。俺はちっぽけな、薄汚れた大人の一人だ。どうして、どうして兄さんはこの子を遺して逝っちまったりしたんだ』
なんで、泣いてるの?なんでそんなに、助けてほしそうな顔をしてるの?ねえ、もしかして私が邪魔なの?だったらごめんなさい、おじさんに迷惑かけるなら私、この家にいたくないよ、なんだって。
『…………ごめんな、ごめんな。おじさんが駄目な大人のせいで、君みたいな小さな子に心配かけて気を遣わせて。大丈夫だよ、君は何も悪くないんだ。悪いのは俺だ、君のまっすぐな目を見ることのできない俺なんだ』
いったいどうしたの、おじさん。ねえってば。
『…………そ、そうだよな。ごめんな、変なこと言って。それですまないけど、お使いを頼まれてくれるかい?この手紙を三丁目のおばさんちまで届けてほしいんだ。場所はわかるよね?』
うん!私できるよ。でもおじさん、ほんとうにだいじょうぶ?
『ああ。それじゃあ、いってらっしゃい。車に気を付けてな』
はーい。じゃあ、あとでねー!
『……よし、しばらくは戻ってこないだろう。ごめんな兄さん、俺は地獄に堕ちるべきだと思うよ。俺みたいに出来の悪い弟、卑怯者の屑にあの子は眩しすぎる。こんなわがままで最後まであの子には迷惑かけたなあ…………夢想』
……
………
…………
ただいまおじさん!お手紙渡そうと思ったけどおばさんいなかったから、ポストの中に入れてきたよ。あれ、おじさんなんで机の上で寝てるの?だらしないなあ、風邪ひいちゃうよ?テーブルの上におくすり散らかして……おじさん?ねえおじさん、起きてよおじさん!
「……嫌な夢。だって」
そう言ってむくりとベッドから起き上がり、顔にかかった青い髪を軽く払いのけて洗面台へ向かう彼女の名は河風夢想。これは、ちょうど隼人がクロノス教諭と推薦を賭けたデュエルを行う日の裏で起きていた話。
さっきまで見ていたあの夢を見るのは、ずいぶんと久しぶりだ。二度と思い出したくない記憶の一部。もう忘れよう、そう呟いて軽くあくびをした彼女は、自分が空腹なことに気が付いた。朝食というにはいささか遅い時間だが、ブランチと洒落込むことにしよう。それから、今日は確かレッド寮の清明の友達がクロノス教諭とデュエルをする日だったはずだ。食べたらそれも見学しに行こう
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