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IS<インフィニット・ストラトス> ―偽りの空―
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第十九話 乙女達の聖戦
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の返答は素直に紫苑の身を案じていたと思われるもので彼も素直に嬉しく思った。

「さて、紫音ちゃんが無事戻ってきたことで生徒会はこのメンバーで変わらずよ。来年度はいろいろ問題も増えるでしょうけど、虚の妹もくるし楽しくなりそうね!」

 楯無の言葉に、紫苑は改めて学園に戻れたことを実感し喜びを噛みしめた。

 ……この日以降、紫苑は貰ったチョコの仕分けと消費に苦しめられるのだが、いつの間にか混ざっていた束と楯無からのチョコに少しだけ幸せな気分になった。すぐに楯無からは、それだけ食べてなぜ太らないのかと理不尽な怒りをぶつけられたのだが。加えて一ヶ月後の同日、再び学園は戦場と化したのは言うまでもない。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 出会いがあれば、別れもある。
 結局、三年との交流はほとんどなかった紫苑ではあるが、それでもやはり卒業式というのは感慨深いものがあった。もっとも今までの人生でそんなことを感じたことはなかったのでやはりIS学園が彼にとって特別なものになっているのだろう。

「はぁ、紫音はんがようやっと帰ってきてくれたんに卒業やなんて悲しいわぁ」

 彼の目の前にいるのは唯一、直接交流のあった橘焔。交流……といってもトーナメントで激戦を繰り広げた相手でその際に会話した程度ではあるのだが。
 正直、紫苑は彼女のことが苦手であった。出会い頭に殺意を向けられたのだから当然といえば当然だが。しかし、戦闘中はその技量の高さに感銘を受け、試合後は雰囲気が一変したこともあり若干は苦手意識は薄らいだ……のだがすれ違って挨拶した際に向けられる悩ましい視線には未だ慣れずにいた。

 とはいえ、今の彼女はしばらく紫苑に会えなかったことやその上で学園を卒業してしまうことを心底残念そうであった。それを見て紫苑は復学してから何度目かわからない申し訳なさを感じた。

「私も……残念です。できればもっとお話したかったのですが」
「あはぁ、せやけどたまにアソビに来るわぁ。したら、またヤろうなぁ?」
「あ、あはは、そうですね」

 最後の漢字が自然と不穏なものに脳内変換された紫苑だが、ここでツッコむのも無粋なのでただ頷くしかできなかった。



 孤独だった少年は一年で多くのものを得た。友人であり、経験であり……ISであり。
 それが彼の今後にとって、果たして幸福となるのか……。

 しかし、今の紫苑は前向きだった。一年前、入学前の暗鬱とした様子からは想像もできない。不安が皆無ではないが、今はただこれから訪れる明日に思いを馳せていた。

 だが彼は知らない。公になった男性操縦者の存在により、再び世界が激動を始めることを……。



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