Development
第十九話 乙女達の聖戦
[7/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
とりあえず、明日は一日油断しないこと。あ、紙袋はある? 最低でも五袋くらいは持っていったほうがいいわよ?」
詐欺師って……いやそれに、袋持っていくってどうなの? しかもその数。それでもしそんなことなく一個も貰えなかったら自意識過剰すぎてかなり恥ずかしいんだけど。でも楯無さんも同じ状況になるってことだよね? それってやっぱり現実味があるってことなの?
「ううん、心配しすぎだと思うけど……わかったよ、楯無さんの言う通りにする」
渋々従った僕だけど、この時の自分を後に僕は後悔した。
僕は学園のみんなを甘く見ていた、と。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ヴァレンタインデー、それは思春期の少女たちにとって一年を通して育まれた関係の成果を具現化するための聖戦である。新学期から学校のイベントを通して気になる相手に出会う。早ければクリスマスにはカップルで過ごす者もいるだろう、しかしそれに乗り遅れた者たちにとってそれを羨ましそうに眺めていた屈辱をひっくり返す最大のチャンスとなる。
というほど大げさなものでは本来ないはずの、お菓子メーカーの販促のなれの果てだが、ここIS学園ではそれすら生ぬるい。……女子校に限りなく近いにも関わらず、だ。
戦いは、紫苑と楯無が部屋から出る前から始まっていた。
いや、正確には出れなかった。扉の前に積まれたチョコによって。この時点で紫苑は昨日の甘い考えの自分に一言文句を言ってやりたい気分になった。
楯無の忠告に従って、二時間ほど早く部屋を出たのだがまずはそのチョコを部屋にしまうことから始まる……かと思いきや部屋の前に長蛇の列ができており次々と渡されるチョコ、チョコ、チョコ。いつの間にか最後尾には三十分待ちのプラカードを持った生徒まで現れた。
普段よりかなり早めに出ているにも関わらずその場にいる彼女たちは、いったいいつから部屋の前にいたのだろうか。
なんとか部屋の前での混乱を収めて出発したのがそれから一時間後。
しかしこれは始まりにすぎなかった。教室にたどり着くまでにも次々にやってくるチョコ、もとい女生徒。幸いにも告白のようなものはなかったため、なるべく自然な笑顔でお礼を言いながら受け取っていくが、それが事態を悪化させていることに紫苑は気付かない……横で楯無がため息をついてそれを見ていることも。もっとも、楯無も同じような状況なのだから何に対するため息なのかは不明だが。
応対にもなんとか慣れつつ、紫苑と楯無は教室にたどり着いたのはHR開始五分前。もちろん下駄箱にもチョコは入っていた、というか溢れ出していて大変なことになっていた。紫苑は下駄箱に食べ物を入れるのはどうなんだろう、と疑問に思いはしたがあえて口には出さない。
だが、ようやく状況に順
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ