Development
第十九話 乙女達の聖戦
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ない限り行われない。その自己進化の過程は既に開発者の手を離れており、詳しい条件は僕も開発者である束さん本人にもわかっていない。
故に、稼働可能なISを可能な限り使用することで多くの経験値を蓄積させ、そのうちの一機でもアルティメット・フォームへ到達できればいいと束さんは考えた。
「あったり〜、よく覚えてたね!」
「そりゃ、僕も不本意とはいえ一端に関わってるわけだしね」
うん、気づいたら白騎士事件の関係者だったもんね。けが人もほとんど出なかったし、バレてないとはいえやっぱりそう割り切れるものでもない。
「……嫌だったの?」
う……、言葉を間違えたかもしれない。急に顔を覗き込むようにして目をウルウルさせてくる束さんに僕は言葉を詰まらせてしまう。
「別に……そういう訳じゃないんだけど。でも、僕はそれを目指す理由を知らなかったし、今も知らないんだ。もし知っていて、それを受け入れられるなら喜んで手伝ったし、今からでもそうあろうと思うよ」
僕がそう言うと一瞬束さんは表情を曇らせ俯いたが、すぐにこちらに向き直る。その表情には先ほどわずかに見えた暗い影はなく、かといって笑顔でもない。でも真っ直ぐに僕の目を見る束さんに、今から出てくる言葉に嘘はないと確信させるに十分だった。
「……箒ちゃんと……あとはしーちゃんを守るため、かな」
言いづらそうに、力なく口から零れ出た言葉はそれでも覚悟を持つ力強いものだった。
「はぁ……、なら僕に異存はないよ」
そんな束さんの様子を見て、言葉を決めて、僕はここしばらく迷っていたことに決着をつける。
「詳しく聞かないの?」
「聞いて話してくれるようなら、もう話しているでしょ? だから聞かない。話せる時に話してくれればいいよ。それに、さっきの言葉だけは嘘じゃないって分かったからそれで十分」
「そっか……」
楯無さんに問われてからずっと悩んでいたこと。僕に欠けていたこと。でも、もう迷わない。
「僕は束さんを、束さんの夢を守るよ。その、妹さんのことはよく知らないから彼女のことを守るなんて言えないけど、だから僕は束さんを信じる。束さんの目的を達するために、全力を尽くすよ」
別に彼女以外を、楯無さんたちをただ切り捨てるわけじゃない。仮に楯無さん達と敵対することになってもギリギリまでは和解の道を探るだろう、でも取捨選択が避けられなくなった時には……もう迷わない。なら、そうなる前にできることをするだけだ。
僕の決意を聞いて、僕を見つめる束さんは嬉しさと……それとは別の何かを内包したような表情になる。それが何なのかは僕にはこの時わからなかった。
「ありがと、しーちゃん。でも、これから話すことはしーちゃんの気持ちを裏切ることになるかもしれない」
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