高みに上らせるは鳳と月詠
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どうにか戦後処理も追え、内政も落ち着いて取り込めるようになって一月が経とうとしていた。
愛紗、鈴々、俺の三人の部隊は先の戦に於いての武名が民に伝わったのか、そこかしこから志願者が増え、戦で減った分の兵の数は滞りなく揃いなおした。
まだ増大の兆しが見えたが、さすがに問題点が多いためにある程度で抑える事にしたが。兵が増えると民の働き手が減ってしまうのが一番の問題であるのだから。
幽州で白蓮との摩擦を解消していた頃の経験が役に立ち、案外スムーズにそのあたりの事は運んだと思う。
そういえば愛紗とはあの洛陽での衝突以来どこかぎこちなく接する日々が続いていた。
交わす言葉と言えば事務的なモノばかりで、プライベートな話など全くと言っていいほどしない。鈴々はしきりに俺や愛紗に仲良くしろと怒っていたが、俺の臆病さから飄々と躱しつづけていた。
桃香については忙殺と言うのが正しい状況で、他方の村々を訪れて絆を繋ぐ事に尽力していた。もちろん、城に戻れば普段通りの仕事もある訳でゆっくりと休む暇などなかった。
先の戦いは桃香の中にある何かに火をつけたらしく、倒れるギリギリを保ちつつ、朱里と雛里に相談しながら出来る事を全てこなして行っていた。
曰く、自国の民の話を聞かずして何が王か、ということらしい。愛紗や朱里からは王の威厳というモノについて口を酸っぱくして言われていたが、それも王の新しい形だと桃香に押し切られていた。
確かに桃香の行いは……俺がいた時代の王達の行いに近く、民に力を与えるという意味でも効果的であったので問題は無いモノだった。
月と詠は侍女仕事を行いながら朱里と雛里の事務仕事の手伝いもしており、日々走り回っている。殊更、詠の知識と経験は朱里や雛里には素晴らしいモノであったようで、また詠にとっても二人と思考を語り合う事は充実したモノのようで、三人共がそれぞれの頭脳の幅を伸ばし合っているようだった。
そうした中、大陸に大した動きは無かった……などと甘い事はあるはずも無く、遂に袁家に大きな亀裂が入った。
袁紹と袁術が袂を分かったのだ。理由は袁紹が大将軍に任命されたことで問題が生じた、ということらしいが細かい事は分からない。ただ、袁紹からの使者を袁術の命により紀霊が斬ったという情報が入り、決定的な対立であるだろう事は全ての諸侯に伝わった。
そんな折、俺達の元に煌びやかな服を纏った朝廷よりの使者が訪れ、一編の書簡を提示する。
「平原の牧、劉備。先の董卓討伐に於いて多大なる功績を上げた事を認め、徐州の州牧に任ずる。かしこみて帝のご慈愛をお受けするように」
堅苦しい言葉を放った後、桃香に書簡と一編の印を手渡し、用事は終わったとばかりにさっさと引き上げて行った。
「わ、私が州牧に……任命されちゃったんだ…
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