高みに上らせるは鳳と月詠
[7/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
を包んだ。
洛陽の戦の後もこうして救われた事を思い出して漸く、俺の頭の中で響く一つの言葉が消えた。否、呑み込めた。
俺はいつからあの日の覚悟を見失ったんだろう
皆それぞれが思い描く理想を押し付けていると言うのに
奪ってでも、世界を変える
この世界の未来を奪って、俺の描く未来を与える
その道すがら、誰彼の何であろうと受け入れ、背負おう
切り詰めて切り詰めて、屍と矛盾を積み上げて、爪先立ちで背伸びして初めて平穏に届き得る……可能性が出てくる。だからこそ俺は自分自身が見せる罪の夢を踏み越えなければいけない。
高みへと上り詰める為には、膨大な屍の群れに立ち向かい、引き倒し、踏み越えなければダメだった。
そして……嘘つきと、この少女が言う事は無い。
例え、俺を送り出したあの腹黒にどんな思惑があろうとも、雛里達は俺が思い描いた平穏を作る事を望んでくれているのだから。
効率や理論なんかじゃなく、俺は俺の信じた道を進めばいい。
何よりも、彼女達が信じるなら、俺もまた信じよう。目の前にいる彼女達をこそ信じて、一つ一つ進んで行こう。
胸に灯った覚悟の火は煌々と燃え上がる。俺は少しの間雛里に抱きしめられたまま、目を閉じて一つ一つの想いを見つめなおしていた。
縋りつくように小瓶を受け止めようと手を伸ばしていたのなら、まだ逃げ出す事は出来たのに。
それでも選ばなかったのは彼が弱さを呑み込んだ証だった。
自分はこんなに感情的に誰かに当たる事など今までなかった。それでも、彼には今回どうしても怒っておかなければいけなかったから……手を出した。
詠さん曰く、目が覚めるくらい強烈な事をしないとまた繰り返すから、らしい。
思わず耐えきれなくてその後に抱きしめてしまったけど。
身体を離すと彼には昏い瞳の色は無く、いつかのように透き通った覚悟の光が輝いていた。
「俺はどうやら大切な事を見失っていたらしい。ごめんな」
「許せません」
即答。答えたのは……月ちゃんだった。キッと厳しく秋斗さんを睨んで言葉を紡ぐ。
「一人の女の子を傷つけた罪は謝ったくらいでは許されませんよ」
その言葉を聞いた秋斗さんは目を丸くし、優しく微笑んで立ち上がり、すっと頭を下げた。
「そうか、でも傷つけたのは一人じゃないみたいだ。月も詠も……ごめんな。俺は弱い。だから、間違った時、迷いそうな時、道を違えそうな時、その時はこうやって正してくれ」
「あんたは本当にバカよ。一人で抱え込まなくちゃいけない事も確かにあるけど、その時に一人で我慢するのは違う。秋斗、そこに行きなさい」
詠さんがきつい口調で言い、寝台を指さした。
訝しげな表情で秋斗さんは見返したが、言われるままに寝台に腰かけると、月ちゃん
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ