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乱世の確率事象改変
高みに上らせるは鳳と月詠
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今日の夜にね――――」
 説明をすると二人は顔を真っ赤に茹で上げて慌てふためいたが、最後にはボクの策に乗ってくれた。
 別に、あんたの為だけじゃないわ秋斗。月の為、雛里の為、そしてボク達が望む未来の為に……恥ずかしいけどこれをするんだから。


 †


 日中の喧騒も穏やかになった頃、夕食を終え、まだ明日も片付けが残っている事から酒は飲まずにいた。
 静かに浮かぶ半月が窓の外からにこやかに見下ろしてきて、少し憎らしいと思ってしまう。
 一陣の、今の季節にしては冷たい風が首筋をなぞり、体調を崩してはいけないと窓を静かに閉める。
 もう寝ようかと思い立って、いつものように薬を飲もうと棚の側に行くが……そこにはあるはずのモノは無かった。
 慌てて探し回っていたらコンコンと二回扉が乾いた音を立て、誰かが来た事を知らせる。
「どうぞ」
 静かに扉を開けて入ってきたのは三人。寝間着姿の雛里、月、詠であった。
 椅子に座り、こんな夜遅くに尋ねて来るとは何事かと思い、疑問を尋ねようとすると、
「あんた、これ探してたでしょ」
 すっと、俺の求めていた薬を詠が目の前に突きだした。
「……中身が何か知ってたのか」
「当たり前じゃない。ボクが月に使ったのと同じなんだから。やっぱりあんた、どこか抜けてる時あるわね」
 呆れた、というように肩を竦めてため息を一つ。
 そして手に持つ薬を――――するりと落とした。
 俺は詠がそうする事を分かっていた。だからただ茫然と、スローモーションで落ちて行くそれを眺めた。
 甲高い音が床に響き、欠片と中身が辺りに散らばる。
 泣きそうな瞳で雛里が俺を見つめ、月は少し哀しげに眉を吊り上げて目を閉じた。
「……受け止めようとしたら蹴り飛ばしてやろうと思ってたのに」
 非難の目を向ける詠の物騒な言葉も、どこか悲しそうだった。
「縋りつかなかったって事は、私達がここに来た意味を理解してるのね」
「……こんなモノに頼るくらいならお前達を頼れ、そう言いたいんだろ?」
 分かっていた。臆病な俺はまた自分自身から逃げ出して、愚かしい事にまた……傷つけていた。縋りつかなかった理由は――――
「……頼ろうとしない理由があるのは分かっています。自分だけで呑み込まなければいけないモノで、誰も背負う事の出来ないモノだから一人で背負おうとしているんでしょう。
 ご自分から話そうと思うまで話してくれなくていいです。ただ、そんな自分を顧みずに無理ばかりする秋斗さんには……」
 そこで雛里の言葉が止まる。
 俺は目を瞑り、耳を傾けるのみで何も言わない。
 パチン、と小気味良い音が部屋に響き、俺の頬が雛里に打たれたのだと遅れて理解した。
 続いて……抱きしめられ、
「私も自分勝手を押し付けます」
 優しい声が俺
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