高みに上らせるは鳳と月詠
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く分かり辛いモノだ。
「あなたは本当に……ああ、女の人を誑かす癖も受け入れられませんね」
「……なんで皆そんなこと言うかね。別に誑かした事なんかないんだが」
感心していたら全く訳の分からない発言をされ、愛紗の言葉を否定すると盛大にため息をついてやれやれという様に首を振った。
「まあ、今は置いておきましょう。とにかく……私達は平和な世界を目指す同志です。これからもよろしくお願いします。鈴々と私の背中は任せますので、あなたの背中も任せてください」
キリと引き締めた表情で語ってからすっと手を差し出され、迷いなくその手を力強く握る。
「ああ、これからも変わらずよろしく頼む」
いつかのように信頼を込めて握手を交わしたが、
「それと、あまり無茶はやめてください。目の下の隈が取れないのはまた無理しているからではないのですか?」
じとっと俺を非難の目で見詰め、問い詰められた。
「無茶も無理もしてないよ。夜もしっかり眠れているんだがな……何故か取れないのさ」
そう、眠り薬で寝れているはずなのに薄っすらと浮かび上がっている隈は取れない。きっと精神的なモノだから無理なんだろう。
昼なら思考の外に追い出せるが、どうしても夜遅くになるとあの夢が頭をちらついて思考が落ち着かない事が多い。
焦燥感、罪悪感、責任感、使命感、色んな感情が綯い交ぜになってどうしようもなくなり、そのような時は剣を振ってから薬で寝る。身体的な疲れと相まって良く眠れるから。
ぶっ壊れたら全てが台無しなんだから何でもするさ。
そんな事を考えていると愛紗が目を瞑り、また一つため息をついてから言葉を紡いだ。
「多くは聞きません。ですが何か話したくなった時は……話相手くらいにはなります。星のように酒有りき、とはいきませんが」
「ありがとう。そうさな、その時は少しお言葉に甘えさせて貰うよ。……クク、やっぱり愛紗は優しいな」
またあなたはそうやって、と何やらお説教の雰囲気が出そうになったがどうにか止まり、今までのぎこちなさも露と消え、俺達はしばらく仕事の話や他愛ない話に華を咲かせた。
†
秋斗の部屋の、先に纏められた荷物を運び出す時、棚に並ぶ酒瓶に紛れて一つ異常なモノを見つけた。
自分が使ったからこそ気付けたのだ。その小瓶の色は、まさしくあの時月に使った眠り薬と同じ入れ物だった。中身を一滴ポトリと肌に垂らして確認すると薬の色も同じであり、確信に至る。
きっと秋斗は誰にもバレないと思っていたのだろう。
だが甘い、眠り薬は洛陽でも希少だったから、種類は一つしかないのだ。
そして理解してしまった。
あいつはこれを使っても隈が取れない程……精神が摩耗している。
こんな状態で次に起こる事態に耐えられるのか?
疑問が頭に浮かぶがどう
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