第T章:剣の世界の魔法使い
心意
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刃の攻撃で、ヒースクリフを倒せるだろうか……。
「キリト」
「――――何だ」
「もし俺が死んだらさ、ヒバナに謝っといてくれ」
「そんなこと言うなよ。生きて、この戦いに勝つんだ。次は現実世界で会おうぜ」
「――――おう!」
コクライは、傷ついた刀を構えると、目を閉じ、意識を集中させる。
《心意》。インカーネイト。それは、『願う事』だとヒースクリフは言った。ならば、コクライの望みはただひとつ。
「勝利だ!!」
コクライの刀を、爆発的な光がつつむ。抜刀。時空を引き裂いて、輝きの衝撃波が飛ぶ。
「なに!?」
それは、ヒースクリフの暗黒の波動をも切り裂き、彼の盾を真っ二つにスライスした。真紅の鎧に、亀裂が走る。
「――――やってくれるな。だが、甘い」
「ぐ――――!?」
「コクライ!?」
コクライが、右手の刀を取り落す。
「あ、頭が……」
「おい、コクライ!?」
頭を押さえてうめくコクライ。ヒースクリフは、解説するように言葉を紡ぐ。
「《心意》はいわば魂の解放だ。強靭な心、強靭な魂がなければそれは不可能。君たちの心意気は素晴らしかった。しかし、まだ甘い。ただの一度も心意技を使ったことの無いものが、全力で魂を開放すれば、その者の脳、そして肉体に与えられるダメージは莫大なものになるだろうね」
ヒースクリフが剣を構え、ふり払う。
「さらばだ、コクライ君。君はこのSAOで最も強い刀使いだったよ」
闇の波動が、放たれる。それは、かわすことのできない致死の刃となって、コクライを切り裂く―――――
その寸前に、何者かによって阻まれた。インパクト。赤い髪が、細い四肢が宙を舞う。
「――――ヒバナ……!?」
ヒバナだった。ヒバナが、消えるはずのない麻痺を振り払って、コクライを守った。それは、強い願いの力。小さな小さな、心意の力。
「コク、ライ……よかった……」
「おい、何でだよ!!何で俺をかばった!!」
コクライが、ヒバナの手を取って叫ぶ。ヒバナの肩口から腰にかけて、真黒い傷が開いていた。ヒバナに与えられた痛覚は、今までキリト達が味わってきたもののどれよりも大きいだろう。
それでいて、ヒバナは気丈に微笑む。
「ばか……決まってるでしょ……!コクライが……光紀のことが、大好きだから、だよ……」
「なら……なら、逝くなよ!!俺を置いて逝くな!!ヒバナ……火花!!」
ヒバナのHPゲージは、ゆっくりと、0に向かっていく。後三十秒ほどでその肉体は消滅し、それから十秒後、彼女の意識はこの世から永遠に消滅する。
「……させない」
キリトが、絞り出すようにつぶやく。
「させない!!」
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