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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第四十二話 密談
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要としなかったさ」

思わず笑ってしまった。しかしフェルナーが哀しそうな表情をしていたので直ぐ止めた。時代が人を必要とするのであれば原作世界では貴族達の政治が限界に達したからラインハルトが登場したのだと俺は思う。だとすれば俺がこの時代に生まれたのも偶然では無く必然なのだろう。

フリードリヒ四世が言うように全てを焼き尽くすか、不要な物を流し去るか、その担い手を必要とする時代が来たのだと思う。もっとも俺がその不要な物を流し去る担い手に選ばれた事は不本意の極みだが……。

屋敷に戻ると俺とフェルナーは密談用の部屋に入った。俺がそれを望んだ。話している最中に貴族に対して罵声が出そうだ。大公や大公夫人に聞かれたくは無い、エリザベートにもだ。改革の必要性は認めているだろうが貴族に対する批判を聞くのは辛いことも有るだろう。

フェルナーにゲルラッハ子爵との話しを説明した。話しが進むにつれてフェルナーの表情も厳しくなる。終わった時には大きな溜息を吐いた。
「難問だな、しかし一年後に問題になるというのはどういう事だ?」
「決算報告書と資産目録が公表される。連中が領地開発のために借りた金を資産運用に転用している事が公になる。領民達は大騒ぎだろうな」
フェルナーがまた溜息を吐いた。

「対策が難しいのなら決算報告書と資産目録の公表は延ばした方が良いんじゃないか?」
「無理だよ、公表は平民達もフェザーンの商人も心待ちにしている。延ばせば何か不都合が有ると感付くだろう。無責任な噂が出かねない、そちらの方が危険だよ」
それくらいなら正直に公表した方が良い。貴族、政府に対する不満は出るだろうが訳の分からない信用不安は起きずに済む。

「年内に何らかの手を打つ必要が有る、そういう事だな?」
「そういう事だ、だがその打つ手が見つからない……」
今度は俺が溜息を吐いた。
「……卿は反対のようだが少しずつでも返済させるしかないんじゃないか?」
「……平民達が納得すると思うか?」
俺が反問するとフェルナーは顔を顰めた。

「領内開発に使うべき資金を他の目的に使っていた。そこから出る利益を領内開発に回すならともかく遊興費と私兵の維持に使っていたとなれば領民達が納得するとは到底思えない。おまけに返済するとなれば領内開発に回す資金は僅かなものになるだろう……」
「ではその利益を領内開発に回すというのはどうだ? 改革の成果として領民達には受け取られるはずだ」

「融資を受けた貴族の中には例のフェザーン商人から借りた借金を政府に肩代わりしてもらった貴族がかなり含まれているんだ。その連中は政府に五十年近く借金の返済をし続ける事になる、しかも無利子でだよ、アントン。さっきも言ったが返済を続ければ領内開発に向けられる資金はごく僅かになる。本格的に領内開発が
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