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『八神はやて』は舞い降りた
序章 手を取り合って
第2話 最初の願い≠最期の願い
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 「わたし」と言う分には、「僕」と「わたし」のどちらを使うのか迷っているのねぇ、と、父には微笑ましく思われていたようだ。
 そんなこんなで、「僕」「俺」「わたし」の境はとても曖昧だった。
 複数の人格が存在するわけでもなく、頭を切り替えるときに自然と口調が変わってしまう程度。
 日常生活において特に支障はなかった――と思う。


 ――――前世の知識とやらは便利なものだ。


 それが、当時の「僕」の認識だった。
 あの日までは、そう思っていたのだ。


(なぜ、いままで忘れていたのだろうな)


 思い出したときには、もう遅かった。
 なにもかも、終わった後だった。
 これはもっと後の未来の話。
 何もかもが手遅れになったときの話。
 救いがあるとしたら、それは――。





 ぱちりと目が覚める。
 ふわあ、とあくびをしながら、ベッドから身を起した。
 何か悪い夢をみていたような気がする。
 思いだそうとしても何も思い出せない。
 ふと、頭をよぎったのは9つの青い石。
 あれは一体――と思い出そうとすると頭が痛くなった。


「マスター、お目覚めですか?」


 声をしたほうをみやると、そこにいたのはリインフォース。
 そう、リインフォースがいた。
 アニメ作品「魔法少女リリカルなのは」では、リインフォースは、消滅してしまう。
 が、こうして目の前にリインフォースがいる。
 彼女もボクの大切な家族である。


「顔色が優れないようですが、大丈夫ですか」

「大丈夫、夢見が悪かっただけ。おはよう、リインフォース」


 心配そうに体調を訪ねてくる。
 細かな気配りができて、家事全般を任せられるリインフォースは、八神家のお母さん的存在だと、勝手に思っている。
 ちなみに、家事はリインフォースとボクで分担している。
 他の家族に任せると、まあ、大惨事になったからねえ。
 ヴォルケンズは戦闘では頼りになるが、家事はだめだめだった。


 シグナムが掃除すれば、家の中が滅茶苦茶になり。
 ヴィータが洗濯すれば、制服がしわしわになり。
 シャマルが料理すれば、毒物が出来上がる。
 ザフィーラは、まあ、ペットだし。
 戦闘ではあんなに便りになるのに……マジ脳筋。


 ヴォルケンズ――ヴォルケンリッター、日本語に訳すと雲の騎士。
 実は、彼女たちは、人間ではない。
 過去の文明の遺品――すなわちロストロギア――の『夜天の書』に付属した守護騎士であり、プログラムである。
 リインフォースは彼らを統括する管制人格という存在だ。
 人間ではないとはいえ、ボクは彼女たちを本当の家族だと思っている。
 夜天の書については、また後で。
 
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