焦がれる夏
弐拾伍 伏兵
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ウントができる。
(これ絶対、インコース真っ直ぐ投げる布石だよなあ。でも、分かっていてもこのままじゃ打てないよなぁ。)
健介はネクストの日向を見た。
そして心の中で呼びかける。
(日向さん、円陣で"上から叩け"って言いましたよね。すんません、言いつけ破ります)
健介はそして腹を決めた。
小暮がセットポジションに入る。
2塁走者に一瞥をくれてから、足をグッと引き上げる。そこから本塁方向へと勢いよくステップアウトしてくる。健介はそれと同時に、軸足を背後にずらした。
小暮は健介の予測通り、インコースギリギリへと思い切り良く真っ直ぐを投げ込んできた。
健介は軸足をずらした分、立ち位置がホームベースから離れる。インコースギリギリの球が、健介にとっては真ん中内寄りの真っ直ぐに見えた。
いつもはコンパクトに叩く所を、体重を軸足に乗せたままで、思い切り背筋をしならせ、自分の背中を叩くような軌道で振り上げた。
カァーーン!!!
アッパースイングで引っ張り込んだライナーが、レフトに飛んでいった。浅めに守っていたレフトの頭上を遥かに超え、フェンスにワンバウンドで当たる。
2塁ランナーの真司が悠々とホームへと帰ってくる。一塁ランナーの青葉が快足を飛ばし、グングンと加速しながら三塁を蹴る。外野から内野へとボールが戻ってきた時には、既にホームベースを駆け抜けていた。
(アウトコースに投げられてりゃ、無条件で三振だったけど……)
健介は学園歌に沸く自軍スタンドに、拳を突き上げる。
(俺、賭けに勝ったんだ!!)
満面の笑みの健介に、スタンドからこれ以上ないほどの歓声が浴びせられていた。2塁ベース上から、この風景を忘れまいと、眼鏡の奥の目を凝らした。
3-1。7回、ついにネルフ学園が逆転に成功した。
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カァーーーーーン!!
甲高い金属音が、県営球場に響き渡った。
マウンド上の小暮はもう打球の方向を振り返らなかった。
鋭いライナーがグングンと右中間に伸びて、そのままフェンスの向こうの芝生に勢いよく弾んだ。ネルフ応援席がお祭り騒ぎとなり、それとは対照に至ってクールに剣崎がダイヤモンドを悠然と一周する。
8回の表、先頭の剣崎が投球を完璧に捉え、今大会二本目の本塁打を叩き込んだ。梅本は目の前から一瞬でボールが消え失せたような感覚に半ば諦めたような笑みを浮かべ、小暮は表情こそ変わらないがその肩をがっくりと落とした。
4-1と、3点差に広がった点差に時田は表情を険しくし、ベンチの最前列から退いて、深く腰かけて天を仰いだ。
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「ストライクアウトォ!」
逆転に成功して以降、気持ちが晴
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