焦がれる夏
弐拾伍 伏兵
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これ以上ない真っ直ぐで、うるさい青葉を黙らせた。
「ボール!」
しかし、審判はその手を上げなかった。
小暮が目を見開く。
青葉は助かったような安堵の表情で一塁に生きる。
小暮はギリ、と奥歯を強く噛んだ。
(こいつ……手が出せなかった癖に、咄嗟にヒザを曲げて見送りやがった!審判に高めのボールと思わせやがった!)
何というしたたかさ。
飄々とした風貌の一年生の狡猾さに、悔しさが積もった。
「まだ一、二塁だ。落ち着け。次を討ち取ればいいんだ。」
頭に血が上りかけた小暮のもとに梅本がすぐさま駆け寄り、なだめる。
ネルフとしてはさらに広がったチャンス、打席には二番の健介が入っていた。
ーーーーーーーーーーーーー
(四球一つ選ぶ時も、青葉はいつも低めならヒザを伸ばし、高めなら身を屈めて、って習慣づけてやってたからなァ。こういう所で出るよなぁ小さな積み重ねが。)
健介は一塁ベース上の後輩に感心しきりであった。
(こんな優秀な一番打者が居るおかげで二番の俺はバントばっかだけど、やっとチャンスが回ってきたぜ)
健介は不敵にメガネを光らせた。
「健介!お前に任せた!」
ネクストから日向が声援を送る。
二死のこのチャンス、サインはない。
打つのみ。
健介と小暮との勝負だ。
「小暮、ここがヤマだぞ!」
「小暮さん、今度こそ捕りますから!」
セカンドの川口が、ショートの中林が小暮に声をかける。小暮はその声援に黙って頷いた。
(さっき真っ直ぐで押していっての四球だからなァ…ここは一球、変化球で入るはず)
健介は変化球に的を絞った。
(それをライトに叩く!)
スタンスを広げ、スクエアに構える。
グリップを余らせて持ち、得意の逆方向への痛打を狙う。
その健介の狙いは当たる。
初球は外に、スローカーブが落ちてきた。
(いただき!!)
「カン!!」
引きつけて、バットをライト目がけて放り投げるように出した。ライト線にライナーが飛ぶ。
「やった!」
「落ちた!」
「いけぇー!」
ネルフベンチは快哉を上げ、応援席は歓声に包まれる。白球はライト線の僅かに外側に落ちる。
ファール。球場はどよめきに包まれる。
(あぁ〜せっかく狙い通りだったのになぁ)
がっくり来たのは健介だ。
あと少しの所だったとはいえ、自分の打ち方にお誂え向きのコースを、ファールにしてしまった。そして、同じ球は二つと来ないだろうという事を健介は知っていた。
二球目は初球と真逆のインコースに、真っ直ぐが投げ込まれる。健介はバットに当てるだけで精一杯で、0-2と追い込まれる。
三球目、四球目とアウトコースに見せ球を挟み、2-2のカ
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