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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第46話 「思惑と読みあい」
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ォン・ゴールデンバウム■

 あのやろう、いったい何を考えてやがる。
 ……帝国の弱点に気づいたか?
 いや、シルヴァーベルヒもオーベルシュタインも気づいている。フェザーンに駐在していたやつが気づかないとは思えん。
 くそっ、時間だ。時間が足りない。
 せめて後三年は、時間が欲しい。ようやく動き出したんだ。一旦動けば、あっというまに追いつく。そうか、それを理解したのか……。
 対抗するより、内から食い荒らそうという事か?
 同盟が帝国に併合された場合、フェザーンどころではない巨大な自治領が誕生する。
 経済規模も大きい。しかも併合ともなれば、そうそう討伐もできん。それどころか保護する義務が生じる。軍事力では圧倒できても、民間レベルでは向こうの方が上だからな。
 こっちの生活水準を、同盟レベルまで持っていかなければならない。
 といっても、決して低いという訳ではないから、厄介だ。まあ、上を見ても下を見ても切りはないからな。どうしたものか?
 頭の痛い問題だ。
 しかも反応してしまった以上は、知らん振りもできん。

「あーもー。いっそ、本気で動かすか……」
「動かすのか?」

 ラインハルトが、机に手をついて身を乗り出す。

「ただし、目標はティアマトではなく、エル・ファシルだ」
「エル・ファシル?」
「そうだ。有人惑星を一つ、占領してしまう。そうなれば嫌でも出てくるだろう」
「確かにそうだけど、良いのか」
「良くはない。爆弾を抱えるようなものだ」

 残念ながら、今の帝国に同盟を併合するような余裕はない。
 軍事力で打ち倒す事はできても、統治する事ができないんだ。政治体制が違いすぎる。旧同盟のあちこちでテロが横行するだろう。そう考えれば、地球教の方がまだマシなぐらいだ。あれの教義をそのまま認める気はないが、麻薬さえ作らなければ、存続を許してやっても良い。というか、麻薬がなければあっさり、支配層が教団から追い出されるだろうしな。
 そうか……。
 あのやろう〜こっちが出て来れないと考えやがったんだな。
 脅しても本気で出てこれない。
 大軍になればなるほど、倒した後の事を考えると、やばい。やばいとなれば動けなくなる。
 それを見越して動かす気になったか……。
 しかも倒されても、こちらの懐に入ってくる気だ。原作でもそうだったような気がする。
 帝国でも今は貴族だけだが、議会が作られた。いずれ平民も議会に参加できるようになるだろう。そして立憲君主制に移行しようとしている事も、気づいているはずだ。
 じわじわやられるよりも、急激に変化した方が、同盟側を統治する事は難しくなる。それは巨大な自治領になるだろう同盟を、纏める事が難しくなるという事だ。
 纏めようとすると否が応にも、同盟の首脳達の権限を
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