六十五 待ち人
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な薬草があり、尚且つ比較的平和なこの波の国に住んでいるのである。
だが一時期ガトーの存在が波の国の空気を不穏にし、重吾の精神をも脅かしていた。
特異体質により小動物と意思疎通出来る重吾は、動物から得た情報をナルトへ流す役割も担っている。体質故、国内の険悪な空気を逸早く感じ取った重吾はすぐさまナルトに助けを求めた。
以上の事から、ナルトが波の国の内情に精通していたのは重吾によるものが大きい。もっとも、橋の建設に力を入れていたタズナが木ノ葉の忍びに依頼するという事柄は、ナルトの推測だ。
重吾から得た情報を基に先を予測した彼は、白と再不斬に波の国へ赴くよう要請した。木ノ葉の忍びである波風ナルの力量の確認もあるが、重吾が気掛かりだったからだ。
いくら薬で精神を安定させても、ガトーの影響で不穏な空気が漂う国内では、いつ殺人衝動が起こるか分からない。だからこそナルトは薬の調合法を知る白と、重吾を抑えられる可能性を持つ再不斬を波の国へ派遣させたのだ。
「今はこの国の景気も回復しつつあるから、発作も無い。それにナルトさんの手を煩わせるわけにはいかない」
ナルトの懸念を払拭させるべく、重吾はわざと明るい声を上げた。ナルトが物言う間もなく、断固として告げる。
「ナルトさんがいなければ、俺は人間でいられなかった。『鬼』のままだった」
心優しき心と殺人鬼の心を抱く重吾。いつどちらに転ぶかわからない『天秤の重吾』――『鬼』と呼ばれた少年。
二重人格の如く豹変する体質は自分ではどうしようもなかった。自らを檻に閉じ込めても、その檻すら破壊する凶悪な力を抑制する事は叶わなかった。
でも今や、波の国で穏やかに過ごしている。この夢のような現実を叶えてくれたナルトの存在は、重吾にとって『神』同然だった。
「ナルトさんが俺を『人間』にしてくれたんだ」
重吾は敬愛の眼差しでナルトを見つめる。白や君麻呂同様、己を崇拝する重吾にナルトは苦笑した。
白も君麻呂も重吾も、幼くして両親を亡くしている。本来親へ捧げられるべき親愛の情が自身に向かっているのだろうと、ナルトは聊か寂寥感に苛まれた。
重吾の話を不貞寝しつつも聞いていた再不斬が欠伸した。瞑目したまま、首切り包丁に手を伸ばす。
「おっと」
何時の間に、目を覚ましたのか。忍び足で家の戸口に向かおうとした水月の行く手を首切り包丁で阻む。気づかれていないと思っていた水月が、逃げ道を遮られて冷や汗を掻いた。
寝そべり、瞳を閉ざした状態で水月の逃亡を食い止めた再不斬。その口許だけが静かに弧を描く。
「何処へ行くつもりだ?」
愉快げに笑う再不斬の顔は、『鬼』と『人間』のさなか――『鬼人』と呼ぶに相応しい顔だった。
「話の途中で席を立つなんざ、感心
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