六十五 待ち人
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緑に恵まれた国である。
重吾の家は、その波の国にあった。
人目を避けるように、森の深奥部にある家屋。四方は林に囲まれ、聞こえてくるのは鳥や動物の鳴き声、それに川のせせらぎの音だけだ。
日当たりの良いのどかな場所。ナルトの指示で白と再不斬がガトーに雇われていた際、白が薬草を摘んでいたあの森である。
家屋の横には薪置き場があり、聊か離れた場所には魚獲り用の網を仕掛けてある川が流れている。鬱蒼と生い茂る広大な森の中でひっそり佇んでいるものの、存外住み心地が良さそうな家だ。
その家の主人たる重吾はナルトの傍から一向に離れようとしない為、誰が主なのか少々解り兼ねるが。
「てめえ、いい加減離れやがれ!ウチのダーリンにべったりくっつきやがって!!」
「いや、違うだろ」
業を煮やした香燐が怒鳴る。それをげんなりした顔で再不斬がツッコんだ。ナルトに至っては反論する気力もないようだ。心なしか、疲れて見える。
「そうですよ!ナルトくんは皆のお母さんみたいな存在なんですから!独り占めは許しませんよ!!」
「…それも違うだろ、白…」
とんでもない事を言う白に、再不斬は眉間を押さえた。まともな発言を期待していただけに、頭が痛い。付き合い切れねぇ…と呟き、囲炉端の前でごろんと横になる。
不貞寝する再不斬に苦笑を零したナルトがようやく口を開いた。
「重吾、暫く来られなくてすまなかったな。発作は抑えられているか」
「大丈夫。ナルトさんのおかげだ」
気遣わしげなナルトの問いに、晴れやかな面立ちで重吾は答えた。
元来おとなしい性格の重吾だが、時折殺人衝動が湧き起こる事がある。
その衝動を抑える事が出来る唯一の人物がナルトだ。また、重吾の異常な性質を更生させる為に、波の国に住むよう勧めたのもナルトである。
その理由が波の国に群生する植物だ。この森に生えている薬草で調合した薬のみが重吾を落ち着かせ、精神を安定させる効能を持つ。
以前波風ナルと偶然出会った白が摘んでいた薬草は、畑カカシとの闘いにより傷を負った再不斬の治癒及び重吾の薬に用いるモノだったのだ。薬を開発したナルトと当事者である重吾は勿論、その薬の調合法を白も知っているからである。
「…そうか。ガトーが滞在している間は大変だっただろう。お前の体質は周りの空気にあてられて変化するからな」
重吾の体質は自然エネルギーをその身に取り込み、それ故に【仙術】に由来する術が多彩に扱える。ナルトの来訪を告げた小鳥の言葉が解ったのもその力によるものだ。
しかしながら自然エネルギーは周囲の空気が大いに影響する。例えば平穏な国ならば重吾も落ち着きを保っていられるが、戦が絶えない国ならば常に殺人衝動が抑えられない状況に陥る。だからこそ重吾は、薬調合に必要
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