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第十八話 迷路
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出す言葉を止められなかった。それが彼女の矜持を守るのに繋がるのだから……。
「しーちゃん、寝れないの?」
気づけば夜も更けている紫苑のところへ束がやってくる。
「ん、ちょっと考え事をしてて」
先ほどまで束が敵対する可能性なども少なからず考えていたこともあり、少し気まずい気分になるもそれは表に出さないように努める。
「そうだ、一つ聞いてもいいかな?」
「な〜に?」
「もし……もしだよ? もし僕が束さんと敵対することになったらどうする?」
そして、束に同じ質問をぶつけてみたい衝動に駆られ、聞いてみることにした。そこに、自分の答えに繋がるものがあると期待して。
「別にどうも? しーちゃんが敵対するのは悲しいけど、しーちゃんだもん。理由があってそうするんでしょ? 出来るだけそんなことは避けたいけど束さんだって譲れないものがあるから、それはお互い様だよね」
言葉は違えど、それは楯無と同じ。自分のことを信じてくれているからこその言葉。少なくとも紫苑にはそう感じられた。
「え、なになに!? もしかして本当にしーちゃん束さんの敵さんになっちゃうの? 嫌いになっちゃった? そんなの嫌だよぉ、ちゃんと理由を教えて! 全部ぶっ壊すから!」
しかし、直後に前言を覆しかねない暴走をする束に紫苑は本当にそうなのか疑問を持ったのは仕方がない。
「違うよ束さん、僕だっていつまでも束さんの味方でいたいんだから」
それは素直な気持ち。例え、これから先何があったとしても変わらない気持ち。
「ふふふ〜、よかったぁ。じゃぁ久しぶりに一緒に寝よっか!」
「寝ません!」
「ぶぅぶぅ、しーちゃんのいけず〜」
あんまりな束の態度の変化も、どこか紫苑には懐かしく好ましいものに感じられた。
「もぅ……でも、ごめんね。一緒には寝れないけど……ちょっと眠くなってきちゃった……」
「うん、束さんはもう行くよ。ゆっくり休んでね」
「ん……ありがとう、おやす……み……」
目が覚めて二日目。怪我や病気は治っているとしても体力だけはどうしようもない。考えさせられることも多かった千冬と楯無との会話と束と話すことができた安心感からか、すぐに紫苑は微睡の中へと落ちていった。
「おやすみ、しーちゃん……ごめんね」
故に、束の言葉も最後まで聞くことはできなかった。
それは果たして何に対しての言葉なのか、今はまだ誰も知らない。
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