第T章:剣の世界の魔法使い
《エネマリア》
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「皆さん、お待たせしました!!」
「シェリーナ!?どうしてここに……」
シェリーナが駆け寄ると、キリトが驚愕さめやらぬ声で聞いてきた。
「遅れてしまって申し訳ありません。七十五層の《エネマリア・ゲート》をつなげるのに手間取りました。もう大丈夫です」
キリトが聞きたがっているところは一切答えない。キリトには悪いが、ドレイク自身がその答えを明かすまで、シェリーナは《エネマリア》の正体について答えてはいけないのだ。とりあえずキリトは、ドレイクが以前見せた《魔法》にかかわる能力なのだろうと判断したらしく、それ以上問い詰めることはしようとしなかった。
「……シェリーナ」
「大丈夫です。私たちに任せてください」
キリトは数瞬ためらうように停止したが、一つ頷くと《攻略組》プレイヤー達を壁際に退避させ始めた。彼らを護衛するように、何体かの《エネマリア》のモンスターが続く。
「シェリーナ?シェリーナってまさか……《顔無し姫》?」
「マジか……メチャクチャ可愛いぞ……」
《攻略組》プレイヤーたちの声はつとめて無視する。やはり「指示を聞いてもらうために注目を集める」べく、フードを外してきたのは間違いだったか……。
「……いえ、今そんなことを気にしている場合ではありませんね」
シェリーナはいつの間にか寄り添うように戻ってきていた黒い死神に語りかける。
「行きましょう、ディスティ。ドレイク達が待っています」
『――――』
無言で肯定の気配。ディスティは、知っての通り第一層主街区の地下ダンジョンを守護していた《運命の鎌》の名をもつ死神だ。ドレイクとユイに撃退された後、いかなる理由か彼は《エネマリア》に所属している。ドレイクよりもシェリーナになつき、現在行動を共にしている。
シェリーナはディスティに微笑むと、ボス部屋の対岸で骨百足と戦うドレイク達《エネマリア》の元へ向かって走り出した。
「ドレイク!プレイヤーたちの避難、完了しました!!」
「了解!それでは行きましょう」
ドレイクが手のひらをシェリーナに向けて、術式を起動させる。
「―――――《オーバードライヴ》!!」
瞬間、シェリーナの体を真紅の淡いエフェクトライトがつつむ。体中のリミッターが解放されていく感覚。87レベルのプレイヤーの域を超えた状態へと、一時的にシェリーナの実力を高める。これが、ドレイクの《魔法》の中で唯一の《システム由来の術式》、《オーバードライヴ》の効果だった。
シェリーナは、今なら普段装備できない武器を使えることを直感的に確信した。信じられない速度で指がひらめき、アイテムストレージから一本の剣が実体化する。
血のような赤色の水晶と、黒銀色の素体で構成され
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