六幕 張子のトリコロジー
3幕
[1/2]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
はぐれていた姉には、ルドガーとジュードの推理通り、ローエンとアルヴィンが同行していたらしい。
そこでフェイは、同行者の中に先ほど会ったばかりの人物がいるのに気づいて、急いで姉の下へ行った。
「お姉ちゃん。あのメガネのおじさん、だあれ?」
「ユリウスだよ。ルドガーのお兄ちゃん」
フェイはユリウスを見上げた。ルドガーに兄弟がいた。自分と同じで上のきょうだいが。その事実は新鮮な驚きをフェイにもたらした。
ルドガーが動いた。ユリウスの正面まで歩いて行く。
フェイはエルと顔を見合わせ、それを追って、ルドガーの少し後ろに立った。
「言いたいことも聞きたいこともたくさんあるから、先に言っとく。さっき、助けてくれてありがとう」
「――大したことじゃないさ」
「大したことだろ。大精霊の攻撃ハネ返すなんて」
「そっちじゃなくて。俺がお前を助けることが、だ」
ルドガーはこれ見よがしな溜息を長くついた。
「……何してるか教えてくれるよな、『兄さん』。ここまで巻き込んどいて黙秘なんて許さないからな」
「――――、オリジンの審判」
オリジン。その名を聞いてフェイは手で反対の腕を掴んだ。
アスカが口にした精霊である以上、ろくでもないモノに決まっている。もしその〈審判〉とやらがルドガーやエルに良くないものなら、フェイも彼らを留める側に回らなければ。
「オリ――何だって?」
「知らなくていい。今ならまだ戻れる」
「あくまで部外者扱いか」
「お前のためを思って言ってるんだ。巻き込んで悪かったと思ってる。だからこそ、これ以上は踏み込んで来るな」
ルドガーはホルスターから真鍮の懐中時計を取り出した。後ろからだがわずかに、ルドガーが唇を噛みしめたのが窺えた。
「これは、エルたちのパパの!」
エルがルドガーの腕に飛びつき、ルドガーが怯む間に真鍮時計を奪った。ルドガーが時計を手放してしまうと危惧したのかもしれない。
「君たちのじゃない」
「パパのって言ってるでしょ!」
「パパのでもない」
「そーなの! パパとルドガーの時計が一つになったんだから!」
ユリウスが息を呑んだのがフェイにもはっきり分かった。
「――やはりこの子が、〈クルスニクの鍵〉か――っ」
ユリウスの纏う空気が変わった。今、彼は何かの事実に気づいて、その事実を葬るために刀を抜こうとしている。
他でもない、エルに向けて。
フェイのただ一人の姉に向けて。
(お姉ちゃんをキズつける人。ゆるさない)
瞬間、ユリウスの――刀に伸びるはずだった――手にバチン! と、大きな静電気が生じた。
皆が皆、前触れもない現象に困惑を表した。
その中で一人、フェイだ
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ