第二章
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ね」
「そうよ。けれど気分が変わったわ」
女も笑った。媚びる様な、そして誘う様な笑みだった。最初に会った時と同じ笑みだった。
「今日も。貴方と一緒にいようかしら」
「あの夜だけじゃなかったのかい?」
「気が変わったのよ」
何とも気紛れなことだ。
「今日も。いいかしら」
「お望みとあればね」
けれど悪い気はしない。俺もそれでよかった。
こっちでも会いたいと思っていたところだ。丁度いいと言えば丁度いい。俺は顔を近付けて尋ねた。
「そして奥様」
「はい」
またムスクの香りが漂ってきた。本当にこの香りが好きらしい。俺も好きになってきた。
「今夜は何をして遊ばれますか?」
「そうね」
彼女は妖艶な笑みになってから俺に言葉を返してきた。
「まずは乾杯といきたいわね」
そしてボトルを一本差し出してきた。
「どうかしら」
「お望みとあらば」
俺はそれを受け取った。見ればコルクじゃない。ストレートのウォッカだった。
「ダンスでも何でも」
「今夜も離さないから」
「旦那さんのかわりに?」
「最初はそうだったけれど」
俺はウォッカを口に入れた。そしてそれをそのまま飲む。酒の強いのには自信がある。あっという間に半分あけてしまった。
だが結構きた。やはりウォッカはきく。ウォッカにしてはそんなに強いやつじゃなかったがウォッカはウォッカだった。思えば無茶をやっちまった。
「今は違うわ」
「じゃあ恋人?」
「ジゴロね」
その半分なくなったボトルを見ながら言う。ボトルのガラスが夜の街の光を照らしていた。そして様々な色で輝いていた。
「ジゴロ?」
俺はシニカルに笑いながらそれに返した。
「またそれは手厳しい」
「嫌かしら。だったら言い方を変えるけれど」
「まあいいさ」
けれどそれでいいって言った。どっちにしろ歳も金もそっちの方が上だ。だったらそれに徹するのもまた一興だ。
「それでね」
「じゃあ付き合って」
「かしこまりました、奥様」
そう言って右側の座席に向かった。そしてそこに入った。
「おおせのままに」
「それじゃあ行くわよ。ところでウォッカだけれど」
「それが何か?」
「その半分は勿論私のよね」
「そうだけれど?」
俺は答えた。
「そう。だったらいいわ」
彼女はそれを聞いて満足そうに頷いた。
「半分は私のもの。貴方もね」
また妖しく笑うと足に力を入れた。スリットが深く入ったドレスから綺麗な白い脚が見える。実に艶かしかった。大人の女の脚だった。
その艶かしい大人の脚でランボルギーニのエンジンにアクセルが加えられた。そして走りはじめた。
こうして俺達はまた夜の街に入った。また一夜だけの恋人になる。都会の洒落た恋。だがそれは行き摺りの束の間の恋だ。けれ
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