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ワンナイト=ジゴロ
第二章
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かんだ。
「女ってのはわからないものだね」
 その夜女は俺の腕の中で乱れた。そして二人で一夜を過ごした。それがこの夜での出来事だった。俺はその死んだ旦那さんのかわりになってやった。女の方もそれで納得したようだった。
 朝になった。目が覚めるともう隣には誰もいなかった。
「行っちまったのか」
 俺は空になったベッドの隣を見て呟いた。
「自分勝手なことだな」
 苦笑したが悪い気はしなかった。俺も久し振りに満足していたからだ。
 見れば枕元に書置きがあった。綺麗な女の字だった。彼女のものであるのは言うまでもなかった。
『有り難う』
 まずは御礼が書いてあった。
『昨夜は。一夜だけだったけれど』
「元々それが望みだったんだろ」
 俺は手紙を読みながらそう呟いた。
『さようなら。身体も心も熱いうちに』
 どうやらあちらも満足してくれたらしい。
『探さないから』
 それで終わりだった。本当に一夜限りの恋人だった。
「たまにはこんなのもいいか」
 俺は手紙を読み終えてこう呟きながらベッドを出た。そしてシャワーを浴びて服を着た。
「朝帰りとか言われるかな」
 服が同じなので会社での声が少し気になったがそれでも満足はしていた。ホテルの金も払ってくれていた。俺は気持ちよくホテルを後にした。けれどこの時思った。
「またこんなことになればいいな」
 夢だ。本当に夢の話だ。けれどこんな甘い世界に入られるのならもう一度は入りたいものだと思った。そしてそれは現実のものになっちまった。
 それから一週間後のことだ。仕事帰りにまたあの店に行こうと思った。酒を飲む為だったが同時にまたあの女に会えればいいと思ったからだ。
「いるかな」
 俺はそう思っていた。
「いればいいな」
 まあそうそういるものでもないと思っていた。上手い話は簡単に転がっているものじゃない。それに向こうもいつもそこにいるわけじゃない。俺だって他の店に行く。一夜限りだからいいって話もある。俺もそれは頭でわかっていた。だが心と身体はそうじゃなかった。また甘い世界に入りたいと思っていた。
 夜のアスファルトを歩いていた。すると後ろからクラクションが鳴った。
「おいおい、歩道はちゃんと歩いてるぜ」
 俺は振り返ってこう言った。振り返った先には白いスポーツカーがあった。ランボルギーニだった。
「またこれは」
 しかもディアブロだった。こんな夜道で見られる車じゃない。思わず口笛を吹いた。
「やっぱり貴方ね」
 その中から聞いたことのある声が聞こえてきた。窓が開くとそこからあの女が出て来た。そして俺の隣までやって来た。
「あんただったのか」
「また夜の街に行こうと思って」
「車で?」
 俺は意地悪く笑ってこう尋ねた。
「今日は踊るつもりだったのよ」
「本当か
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