暁 〜小説投稿サイト〜
久遠の神話
第六十五話 犠牲にするものその八
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「それでは」
「そうですね、血に塗れた手で子供達に教えることは」
「正しいと思われていますか?」
 高代のその毅然とした、真っ直ぐな光を放つ目を見ての問いだった。
「貴方は」
「既にお答えしています」
 これが高代の返答だった。
「そうですね」
「そういうことですか」
「はい、間違っています」
 それに他ならないというのだ。
「私は間違っています」
「ですがそれでもですか」
「確かに私は罪を犯しその手を血に塗らしてしまいます」
 このことは否定しなかった。詭弁を郎することはしなかった。
「ですが」
「それでもですか」
「私一人が罪を犯し血に塗れても多くの子供達が助かりますね」
「それならですか」
「私一人が罪を犯して多くの子達が助かるのならどうでしょうか」
 聡美のその目を見ての問いだった。
「いいと思いませんか」
「それは」
「そうです、私はそう考えていますので」
「覚悟がおありだからですか」
「そうです」
 その通りだというのだ、高代は毅然としている顔で述べる。
「私はそのつもりで戦っています」
「毅然としていますね、ですが」
「間違っていますね」
「そう思います、しかしそれでもですか」
「何もかもを私は背負ってみせます」
 罪、それをだというのだ。
「何があろうともです」
「覚悟ですね、本当に」
 例えそれが間違っていてもだ、聡美もそれは認めるしかなかった。そしてそのうえで無念の顔で高代にこう言ったのだった。
「私は。神話の頃より」
「その頃からですか」
「貴方達、そしてお姉様を止めようとしてきましたが」
 それをだというのだ。
「一度も止められませんでした」
「そして今に至るのですね」
「どの方も止めませんでした」
「あの女神も」
「特にお姉様は」
 彼女は特にだというのだ。
「止められません」
「色々とされたのですね」
「ありとあらゆることを。汚いことも」
 それこそここで言える様なこともだというのだ。
「してきましたが」
「それでもですか」
「私は止められませんでした」
 俯き、ソのうえでの言葉だった。
「そして貴方達は何度も死んできました」
「死んでいってそして」
「その時の願いを適えた人もいましたが」
「十三人のうちの十二人は死にました」
 常にそうだったというのだ、彼等は。
「神話の頃からそうでした、そして貴方達の命の数だけお姉様は罪を犯してきました」
「セレネー女神ですね」
「私と同じ月の女神のあの方は」
「貴女はあの女神を本当に大切に思っておられるのですね」
「もう一人の私と言ってもいい程に」
 それ程までにだというのだ、聡美はアルテミスとしてセレネーのことをそこまで想っているというののである。
「常に。あの
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ