第二章
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けたものだった。今納得がいった。それは俺だったのだ。
「ああ、あれか」
「思い出してくれた?」
「ああ」
俺はその問いに応えた。
「石だよな」
「そうだよ」
「白い大きな石だったよな」
「そうだよ。今持ってる?」
「今は」
持っていないと言おうと思った。仕事が終わったばかりでそんなもの持っている筈がない。筈だった。
たわむれ半分でポケットに手を入れる。すると何かに当たった。
「!?」
「あったの?」
「いや」
あるのだ。何とポケットの中にそれがあった。信じられなかった。
「ああ、あるよ」
俺は応えた。そしてそれを取り出した。
見ればそれは確かに白い大きな石だった。しかし厳密にはそれは石じゃなかった。
「サイコロ・・・・・・!?」
「あれっ!?」
俺もそのサイコロを見て目が点になった。手の中にあるうちは石だったのに。何時の間にかダイスになっちまっていた。
「サイコロ、だよな」
「うん」
もう一人の俺もそれに頷いた。
「サイコロだよね」
「何でこんなモンがここに?」
正直訳がわからなかった。石があったのもわからなかったがそれがサイコロになっているのはもっと訳がわからなかった。酔っていて間違えたのかと思った。
「それでいいよ」
けれど俺は笑顔でそれを受け入れていた。そういえばガキの頃にこんなことがあった。
「おじちゃんがくれるものだから」
「だからおじちゃんじゃねえって言ってるだろ」
「じゃあお兄ちゃん?」
「まだ二十代なんだよ。そう読んでくれ」
「うん、わかったよ」
と応えても次に会う時にはまたおじさん呼ばわりだ。そんなものだ。
「じゃあお兄ちゃん」
「ああ」
俺はそれに応えた。
「有り難うね」
「それで双六でもするんだな」
「うん、そうするよ」
「他にも遊び方はあるけどな」
「他にって?」
「そのうちわかるさ」
博打のことだがそれは教えない。今からそれを教えたら俺はサラリーマンからヤクザになっちまうからだ。
「そのうちな」
「そうなの」
「で、今からそのサイコロで遊ぶのか?」
「ううん」
だが子供の俺は今の俺の言葉に首を横に振った。
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