第一章
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に通る公園があった。オフィス街にあるありふれた、何処にでもある公園だ。いつも仕事のことばかり考えさせられているのでまともに見たことはない。
その公園にベンチがあるのも今気付いた。少し考えればベンチの公園なんてある筈もなかった。俺はそこに座ることにした。とりあえずの一休みだった。
「ふう」
ベンチの上にどっかりと腰を下ろすと何かまた急に疲れが出て来た。うんざりする疲れだった。
「何時までこんな生活が続くんだよ」
俺はうんざりした顔でこう呟いた。
「仕事仕事ってよ。それで安月給だ」
言いながら過労死するんじゃないかとさえ思った。
命の心配はなくても何かそんな嫌な気分になる。来る日も来る日も仕事ばかりだ。そんなのが人間の生き方なのかとさえ思った。柄にもなく哲学者になっていた。
「俺の人生ってこんなのかよ」
ガキの頃はそうじゃなかった。楽しく遊んでいた。それでも大学を出て気が付いたらこうなっていた。あくせく働くしがないサラリーマンになっていた。
その間に覚えたのは小さな世の中と酒だけだ。他には何もない。本当に何もなかった。仕事のうえでのデータやコンピューターのことなんて覚えたくて覚えたわけじゃない。世の中も見てみれば本当に狭い。アパートと会社を往復して、それで時間がたまたま出来れば彼女と会う。それだけだ。その他には本当に何もない。狭いものだ。
それで酒だ。何か気晴らしに飲みたくなった。適当に缶を一つ手に取って空ける。すぐに口の中に流し込む。
何かのカクテルだった。発泡していてそれが口の中を刺激する。甘い味が口の中を覆う。俺はそれを一気に飲んだ。すきっ腹に酒が派手に流れ込む。
「ふう」
とりあえず一息着いた。それでもまだ足りない。また空けて飲む。気が着いたらもう何缶も空けていた。
「もうないのか」
全部飲んでしまっていた。結局これが朝食になった。とんでもなく不健康な朝食だ。けれどもうそれでもよかった。何か何もかもがどうでもよくなってきていた。
「何しようか、これから」
俺はベンチに座ったまま呟いた。
「アパートに帰るかな」
どちにしろそれしかない。それに何故かあまり酔ってはいなかった。これだけ疲れていると早く酒が回るのに。それを幸いに立ち上がろうとした。その時だった。
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