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ローリング=マイストーン
第一章
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して警備員の人に鍵を手渡す。
「お疲れさん」
 六十過ぎの警備員さんが宿直室の窓から俺に声をかけてくれた。
「昨日は頑張ってたみたいだね」
「ええ」
 俺は疲れた顔でそれに応えた。
「何とか終わりましたよ」
「そうかい」
「何とかね。で、今日は土曜ですね」
「ああ、そうだよ」
「やれやれ」
 本当なら楽しい週末だ。だがこの時はとてもそんな気持ちにはなれなかった。不愉快で仕方のない朝だった。
「どうするんだい、これから」
「さてね」
 俺は疲れた態度のままそれに返した。
「とりあえず休みたいですね」
「何だ、デートとかはしないのか」
「生憎お留守だそうで」
 親について海外旅行中だ。務めている会社は俺が今いる会社よりずっと収入があって時間もふんだんにある。それでその浮いた時間と金を親孝行に使っているのだ。何でも自分を可愛がってくれている御礼だそうだ。今時滅多にいないできた女の子だ。だから俺よりもいい会社にいるんだろう。それを思うと俺が今こんな会社にいるのは日頃の行いが悪いせいかと思った。全く世の中上手くできているとシニカルに思った。
「じゃあ一人かい」
「そういうことです」
「寂しいね、どうも」
「まあゆっくり休みますよ」
 俺は答えた。
「アパートに帰ってね」
「そうだね、そうしなよ」
「はい」
 俺はそのままビルを出た。とりあえず夜から何も食べていないのでコンビニに入った。昨日の六時に同じコンビニで買った弁当を食ってから何も腹に入れていなかった。腹は空いてはいなかったがやっぱり何か入れておかなくちゃ身体がもたないと思ったからだ。
「さてと」
 俺はコンビニの中に入るとまずは辺りを見回した。
「何がいいかな」
 学生のバイトの女の子がにこやかに営業スマイルを見せている前には唐揚げやナゲット、フランクフルトがある。けれど今は油こいものは食べる気がしなかった。
 御握りにしよう、あとお茶か。軽い食事で済ませるつもりだった。そしてまずはお茶を買おうと思った。そこで俺の目にリキュールが入った。
「酒かよ」
 何かもうそれでいいと思った。どのみち仕事は終わって後は何もない。アパートに帰って横になって寝るだけだ。それならもう何が入ってもいいと思った。
 それで酒を買った。とりあえず目に入るのを買い漁った。食い物は結局買わなかった。酒だけ手当たり次第に買った。
「有り難うございました」
 学生さんの明るい声を後ろに聞いて店を後にする。それから俺はふらふらと歩いた。酒はぶら下げているビニール袋の中に山程ある。
 足が重かった。何かブーツを履いているみたいだ。それが俺を一層不機嫌にさせた。
「ああ、糞」
 もう歩くのも嫌になってきた。何処か休める場所が欲しかった。
 見回すといつも会社の行き帰り
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