言葉以外の伝え方
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な」
いつもと変わらない、ティアの言葉。
でも、常に口喧嘩でティアの言葉を受け止めているナツは気づいていた。
だから、ナツが言うのはただ一言。
「堪える必要は、もうねぇよ」
それだけ。
綺麗事に近い、ありきたりな言葉。
―――――――だけど。
「・・・ひっ・・・う、あ・・・」
きゅ、とティアの手がナツの服を掴んで。
その華奢な身体が小さく震えて。
いつもと同じ格好をしているナツの肩に、ポタポタと、雨とは違う水が落ちて。
「う・・・うあああああああああああ・・・っ!」
常にプライドの高い彼女は、涙を流した。
プライドも何もない、ただの15歳の少女としての涙を。
「・・・」
そんなティアを抱きしめながら、ナツは流し終えたはずの涙を流したのだった。
「へー。じゃあ、その後からお互いに名前で呼び始めたんだ」
「おう」
ナツはそう言うと、立ち上がる。
「ナツ、どっか行くの?」
「ハッピーは先ギルド戻ってろ」
「え?」
そう言い残し、ナツは歩く。
目指すのはあの場所。
―Iоri Susewind―
そう刻まれる墓石の前に、ナツはいた。
「イオリ・・・」
呟き、思い出す。
先ほどギルドで喧嘩した時、ティアの目に―――――うっすらと、涙が浮かんでいた事を。
普通に向き合ってれば気づかないだろうが、よく行動を共にし、幼い時から喧嘩してきているナツだからこそ気がついた。
「すまねぇ・・・」
後悔の色が浮かぶナツの顔。
「最近ヤケに元気ねーな、と思って仕事誘ってみたけど・・・ダメだった。逆にアイツ怒らせちまった・・・」
そう言って座り込むナツ。
そう。実はナツがティアを仕事に誘ったのは、最近元気がないように見えたから、なのだ。
だから本人に理由を聞かれた時に答えられなかった、という訳だ。
「今日はそのワビに来た。んじゃあな」
ワビを終え、ナツが立ち上がって帰ろうとした瞬間。
「「あ」」
その先に、ティアがいた。
2人の声が綺麗に重なる。
聞かれてたのか!?と思いながら視線を逸らすと、ティアがゆっくりと口を開く。
「アンタ・・・私が元気ないように見えるからって、仕事に誘ったの?」
「っ!」
はっきり聞かれていた。
「ゴ、ゴメンな!」
とりあえず何かを言われる前に、自分が悪いのだから謝るナツ。
それを見たティアは数回瞬きし、溜息をついた。
「別にいいわよ。イオリさんの名前を出された時はカッとなったけど、特に怒ってる訳でもないし」
「!」
ナツ
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