言葉以外の伝え方
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――――。
イオリの言葉を思い出した。
「ナツ君てさー、思ったり言いたい事を言葉にするの苦手でしょ」
突然言われ、ナツは一瞬何のことを言っているか解らなくなる。
が、すぐに意味に気づいた。
「おまっ・・・バカにしてんのか!?」
「違う違う!ナツ君は言葉に出来ない代わりに、行動で表すねって話!」
ケラケラと笑うイオリの言葉にナツはイライラを抑えながら、再び席に座る。
イオリはふと、相変わらず1人でいるティアに目を向けた。
「・・・ティアちゃんも」
「ん?」
「ティアちゃんも、直球の言葉以外の伝え方があればいいのに・・・」
その、どこか悲しみに似た感情を含んだ言葉に、ナツもティアに目を向ける。
彼女はルーやアルカが話しかけてこない限りは1人で読書をしており、今もしゃくしゃくとリンゴを皮がついたまま食べながら、神話関係の本を読んでいた。
「あたしね。時々ナツ君を尊敬するんだ」
「俺を?」
「そっ。難しい言葉とか、遠回しな言葉とかじゃなく、素直に直球な行動で示すでしょ。誰にでも出来そうで、そんな事簡単には出来ないよ。普通」
ジュゴーッと音を立ててジュースを飲み干し、口を開く。
「もちろん、言葉で伝えられたらそれはそれでいいんだけど・・・時には、言葉じゃダメな時もあるでしょ?そういう時、ティアちゃんには伝える方法がないの」
氷だけが入ったグラスをストローでかき混ぜながら、左手の甲に左頬を乗せ、続ける。
「だからねナツ君。もしも言葉に困った時は、無理に言葉にしなくていいんだよ」
そう言って、笑った。
「言葉以外の伝え方が、ナツ君にはあるんだから」
それを思い出した瞬間・・・ナツの体は自然と動いていた。
伝えられる言葉が自分の中にないのなら、無理に探す事はない。
イオリはそう言った。
だから、ナツが言った言葉は――――――ただ、3文字。
「ティア!」
彼女の名前。
ずっと呼ばなかった、彼女の名前を。
名を呼ばれた少女はゆっくりと顔を上げ。
名を呼んだ青年は水溜りを踏みしめ走り。
名を呼ばれた少女の目がゆっくりと見開かれ。
名を呼んだ青年は、少女をただ、抱きしめた。
「ちょ・・・炎バカ、何して・・・」
戸惑いの声を発するティアを、ナツはただ抱きしめる。
その涙も、辛さも、寂しさも、全てを抱え、受け止めるように。
「聞いてるの?聞いてるなら離しなさい
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