言葉以外の伝え方
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てその最先端には、ギルドマスターであるマカロフが立っていた。
「彼女・・・イオリ・スーゼウィンドは・・・神に愛され神を愛し・・・そして我々友人を愛しておった。その心は悠久なる空より広く、その魔法は愛する者の為に美しく舞い・・・その姿は太陽のように明るく、偉大であった。愛は人を強くする。そしてまた人を弱くするのも愛である・・・」
マカロフが目を伏せる。
「ワシは・・・ズズ・・・彼女を本当の家族のように・・・彼女が、安らかなる事を祈る・・・」
そして肩を震わせ、涙を流し始めた。
それに触発されて、ナツやグレイ、エルザ達も涙を流す。
そんな中、涙を流さない少女がいた。
「・・・」
その少女の名は、ティア。
この年から数えて4年前よりも伸びた髪。凛としていて幼さの残る顔立ち。全てが雨に濡れていた。
黒いワンピースを着た彼女は、一滴の涙も零さない。
「・・・」
彼女はただ、虚無だった。
目は墓を見ているが、その目はただ見開かれたまま、動かない。
口は薄く開き、声にならない声すらも出てこない。
ただ、『そこにいるのが当然の人形』のように。放置された、遊び飽きて捨てられた人形のように、彼女は虚無的に、ただ立っていた。
葬式が終わり、ギルドメンバー達は皆ギルドへと帰っていく。
そんな中、ティアは未だにただ立っていた。
「・・・おい、帰るぞ」
その後ろ姿にナツが声を掛けるが、ピクリとも動かない。
いつもなら「無視されたのか」と苛立つところだが、今は違った。
彼女の様子がおかしいと、ナツは薄々気づいていた。
「聞いてんのか?」
水たまりを踏み、ティアへ歩み寄る。
「おい・・・」
声を掛けた瞬間、ゆっくりとティアが振り返った。
その表情を見て、ナツは目を見開く。
―――――――彼女は、泣いていた。
青い目に涙を溜めて、流すまいとするように、ぎゅっと唇を噛みしめて。
それを手伝うように、拳も強く握りしめて。
「お前・・・」
ティアは何も言わない。
目に溜まった涙を拭こうともせず、ただ、泣くのを堪えるかのように。
どうにかしよう、とナツは思った。
(どうすりゃいいんだ・・・?)
何か声を掛けようか、と考え、すぐに消える。
今すぐにこの状態のティアに掛ける言葉など、ナツの中にはなかった。
「そんな顔見てもイオリは喜ばない」等のドラマなどでありがちな言葉じゃ、現実的な彼女には通じないだろう。
(くそっ・・・!)
何も思い浮かばない自分に焦りもあり、もどかしさもあり、ナツは必死に考え―
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