言葉以外の伝え方
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は兄と弟以外いない』と一点張りで・・・ああ、家族関係聞き出してほしいから傍にいてほしい訳じゃないよ?」
ポニーテールが揺れる。
「ただね・・・知ってほしいの。過去に何があったかは解らないけど、あたしの考え通りなら・・・必要とされない人間なんて、いないんだよって」
ふっと目を伏せ、呟く。
「現実的すぎるあの子なら、『そんなの綺麗事よ』って言うんだろうけど・・・綺麗事でもいいから、境界線を消すキッカケが欲しいんだ。消せないなら、境界線ギリギリまで近づくだけだけどね」
あはは、と笑うイオリ。
同じ笑顔のはずなのに、ナツにはどこか違うように見えた。
「それでね、ナツ君に頼みたい事は単純なの」
「何だ?」
漸く自分が関わるか、とナツはイオリに目を向ける。
「ティアちゃんが悩んでたら、隣で一緒に悩んで。前から引っ張るんじゃなくて、後ろから押すんじゃなくて、横に並んで、一緒に考えて、支えてあげるの。あの子は自分の周りにそういう人を作らないから・・・」
今はあたしがいるけどね、とイオリは笑う。
「でも、あたしは魔導士だから。仕事先で何が起こるか解らないし、もしかしたら危険な目に遭うかもしれない。だから、もしあたしに何かあったら・・・今のあたしの役割を、ナツ君にやってほしいの」
そう言うと、何かを思い出したようにもう1つ告げる。
「あ、あとね。ティアちゃんを守ってほしいの」
「守る?」
「そう。敵から、とかの意味もあるけど・・・ティアちゃん、涙を流せないタイプの子だから。何かあったら、あたしの代わりに、ね」
まるで自分がすぐに死んでしまうような事を言うイオリに、ナツは不安そうな表情を浮かべる。
「大丈夫だって!あたしはそー簡単には死なないから!」
「・・・そうだよなっ!」
明るい笑顔に、ナツも安堵する。
「どう?ナツ君、約束できる?」
「おう!もちろんだ!」
「よーし、その言葉を信じよう!じゃあ、約束ね!」
晴れ晴れと、空から光を降り注ぐ太陽のような笑顔を浮かべるイオリ。
イオリ・スーゼウィンドはその4年後・・・この世を去ったのだった。
「ふーん・・・で、いつから名前で?」
ハッピーが問い、ナツが答えた。
「2年前の・・・イオリの、葬式の日だ」
時は、今から2年前。
暗い雲が空を覆い、マグノリアの街に、雨が降っていた。
ここはカルディア大聖堂。とある墓の前に、多くの人が集まっていた。
―Iоri Susewind―
その墓は、イオリのものだった。
喪服を着たギルドメンバーが、雨の中傘も差さずに立っている。
そし
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