第二章 風のアルビオン
幕間 炎の中の子供
[1/11]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
アンリエッタ王女の歓迎のため、学院長の秘書としての仕事がやっと終わり、今日1日の疲れを癒やすために士郎に会いに行こうとしたロングビルは、ルイズの部屋のドアに張り付いているキュルケたちを見つけ、咄嗟に隠れてしまった。
何してんだいあの子たちは?
特にやましいこと等無かったのだが、つい盗賊時代の頃の癖で隠れてしまい、今更出るのが憚られ、そのまま物陰から様子を窺っていた。
しばらくすると、ドアが急に開き、キュルケたちは部屋の中に倒れこんでいく。ドアが閉まる一瞬、士郎の姿が見えたことから、ロングビルは部屋の中の様子がますます気にはなったが、士郎に気配を悟られないため、ドアには近づかない。
中じゃ一体、何が起こっているんだい? 気になるねぇ……。
隠れていた理由がズレていっているが、ロングビルは自覚することなく部屋の様子を窺い続ける。
キュルケたちが部屋の中に入り、しばらくたつと、部屋の中からキュルケ達が出てくる。
その中にはフードを被った見知らぬ人影があり、ロングビルは一瞬考えた後、キュルケ達についていくことにした。
キュルケたちの後を気付かれないように追いかけていると、中庭の辺りでフードを被った女性にギーシュが何やら胸を張って宣言している。ギーシュの声は誰もいない中庭を通り抜け、ロングビルの耳に届く。
「姫殿下、ご心配には及びません。このギーシュ、必ずやアルビオンに行き着き、ウェールズ皇太子から手紙を受け取って参ります!」
「この馬鹿ギーシュっ! 誰かに聞かれたらどうするのよ!」
予想外のフードの女の正体に驚いているロングビルの視線の先では、キュルケがギーシュの頭をひっぱたき、胸ぐらを掴んで怒鳴り付けている。
「はは、いや、すまない。つい興奮してしまってね。しかし、今は夜中だ、心配しなくても誰も聞いていないさ」
ギャーギャー騒ぐキュルケたちを尻目に、フードを被った女がくすくすと笑いながら頷いている。
「ええ、分かりました。それでは大船に乗った気持ちで待っています」
フードを被った女(ギーシュの言ったことが本当ならば、アンリエッタ王女だが)からの言葉を聞いたギーシュは、恍惚の表情になるが、タバサがそのやり取りを見て、ポツリと呟く。
「青銅は水に浮かばない。沈む」
「タバサ〜。あたしたちも一緒に行くのよ、不吉なこと言うのはやめてよ」
キュルケがタバサが言った的確な言葉に対し、恨みまがしい目を向けるが、タバサは堪えることなく持っていた本に目を落とす。何ら堪えた様子を見せないタバサに、キュルケは肩を竦める。
「まっ、ギーシュには、はなっから期待はしてないけどね。何せシロウもついていくんだし」
え……?
何気なく呟いたキュルケの言葉
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ