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剣の丘に花は咲く 
第二章 風のアルビオン
幕間 炎の中の子供
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 アンリエッタ王女の歓迎のため、学院長の秘書としての仕事がやっと終わり、今日1日の疲れを癒やすために士郎に会いに行こうとしたロングビルは、ルイズの部屋のドアに張り付いているキュルケたちを見つけ、咄嗟に隠れてしまった。

 何してんだいあの子たちは?

 特にやましいこと等無かったのだが、つい盗賊時代の頃の癖で隠れてしまい、今更出るのが憚られ、そのまま物陰から様子を窺っていた。
 しばらくすると、ドアが急に開き、キュルケたちは部屋の中に倒れこんでいく。ドアが閉まる一瞬、士郎の姿が見えたことから、ロングビルは部屋の中の様子がますます気にはなったが、士郎に気配を悟られないため、ドアには近づかない。

 中じゃ一体、何が起こっているんだい? 気になるねぇ……。

 隠れていた理由がズレていっているが、ロングビルは自覚することなく部屋の様子を窺い続ける。



 キュルケたちが部屋の中に入り、しばらくたつと、部屋の中からキュルケ達が出てくる。
 その中にはフードを被った見知らぬ人影があり、ロングビルは一瞬考えた後、キュルケ達についていくことにした。
 キュルケたちの後を気付かれないように追いかけていると、中庭の辺りでフードを被った女性にギーシュが何やら胸を張って宣言している。ギーシュの声は誰もいない中庭を通り抜け、ロングビルの耳に届く。

「姫殿下、ご心配には及びません。このギーシュ、必ずやアルビオンに行き着き、ウェールズ皇太子から手紙を受け取って参ります!」
「この馬鹿ギーシュっ! 誰かに聞かれたらどうするのよ!」

 予想外のフードの女の正体に驚いているロングビルの視線の先では、キュルケがギーシュの頭をひっぱたき、胸ぐらを掴んで怒鳴り付けている。

「はは、いや、すまない。つい興奮してしまってね。しかし、今は夜中だ、心配しなくても誰も聞いていないさ」

 ギャーギャー騒ぐキュルケたちを尻目に、フードを被った女がくすくすと笑いながら頷いている。

「ええ、分かりました。それでは大船に乗った気持ちで待っています」

 フードを被った女(ギーシュの言ったことが本当ならば、アンリエッタ王女だが)からの言葉を聞いたギーシュは、恍惚の表情になるが、タバサがそのやり取りを見て、ポツリと呟く。

「青銅は水に浮かばない。沈む」
「タバサ〜。あたしたちも一緒に行くのよ、不吉なこと言うのはやめてよ」

 キュルケがタバサが言った的確な言葉に対し、恨みまがしい目を向けるが、タバサは堪えることなく持っていた本に目を落とす。何ら堪えた様子を見せないタバサに、キュルケは肩を竦める。

「まっ、ギーシュには、はなっから期待はしてないけどね。何せシロウもついていくんだし」

 え……?

 何気なく呟いたキュルケの言葉
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