第二章 風のアルビオン
幕間 炎の中の子供
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…まるで、それが義務であるかのように……何かから逃げるかのように……
なっ……! 何で子供がっ!
ロングビルが少年の下へ走り寄り、少年に手を伸ばし――――
え……?
すり抜けた。
少年の身体はロングビルの体を通り抜けると、足元の瓦礫に足を取られたのか、倒れるように地面に転がった。
一瞬呆然としたロングビルだったが、すぐに我に返ると少年に振り返る。
――は……ぁ……――
微かなと息を漏らしながら、放心した表情で、少年はヘドロのような空を見上げている。
段々と、少年の呼吸が小さくなっていく……
だ、誰かっ! 誰かいないのかいっ!! くそっ! しっかりしなさいっ! 立ってっ! 立って逃げなさいっ!
触れることが出来ないことに気付いたロングビルは、必死に少年に声を掛けるが、少年は全く反応しない。声が届いていないのか、それとも聞こえているが動けないのかは分からない。ただ、ハッキリと分かることは、このままだと少年は確実に死んでしまうということだ。
逃げなさいっ! 諦めない、で立ちなさいっ!! ……立って……逃げ……なさい……
いつからか流れ出した涙を拭いもせず、ロングビルは必死に言い募る。
しかし……少年は動かず……呼吸が小さくなっていく……
誰か……誰かっ……誰かっ!! この子を助けてっ!!!
慟哭じみた声をロングビルが上げ――
――ああ……生きている――
男が……応えた……
ボロボロの真っ黒なコートを着た男が、少年の前で膝を付いている姿がロングビルの視界に入り――
――虫の音が……聞こえた。
は……? え? ええ?
先ほどまで目の前で広がっていた地獄の様な光景が、見たことのない作りをした家屋に変わり。そして、戸惑いの声を上げるロングビルの視線の先には、男と少年が……いた。
視線の先の男は、先程の地獄の光景の最後に現れた男。そして……少年は、地獄で死にかけていた赤い髪の男の子だった。
男と少年は、木で出来た通路に腰を掛け、空に浮かぶ大きな一つの月を一緒に眺めている。
月が……一、つ?
見たことがない、ではなく有り得ない光景に、ロングビルが訝しげな声を上げると、
「士郎……」
男が少年に声を掛ける。
は……シ、ロウ? え……いやいやそんなまさ、か……だって、髪の色とか……肌の……色、と、か……あっ。
男が士郎と呼びかけたことに、愕然とした表情で赤毛の少年を見るロングビル。初めはまさかといった様子で見ていたが、赤毛の少年の顔に……自分の知るシロウの顔が重なった瞬間――
「僕はね……正
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