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剣の丘に花は咲く 
第二章 風のアルビオン
幕間 炎の中の子供
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悲しみ、様々な感情が入り交じった視線を向けていたロングビルは、一度目を閉じると、次々と沸き上がる思いを断ち切るように視線を逸らす。

 ロングビルが視線を逸らした先には、シルフィードの後ろに座り込んでいる士郎とルイズが。
 
「ふふっ……まるで子猫だね……」

 ロングビルの視線の先には、穏やかな顔をしたルイズが背を丸め、膝を抱えた状態で士郎の背中に寄りかかって眠っている。そんなルイズを士郎は苦笑いしながらも、優しげな顔をしてルイズを見下ろしていた。
 
 その光景は、まるで子猫に懐かれた大型犬が、寄りかかって眠っている子猫をどうしたらいいか悩んでいるようだった。

「ふぁっ……あたしも眠くなってきたね……」
 
 ……起きてたって嫌な考えが浮かぶだけだしね……

 急に眠くなってきたロングビルは、小さくあくびをすると、眠気に逆らうことなく目を閉じ睡魔に身を委ね……






 
 炎の中に……立ち尽くしていた……

 聞こえるのは、家が焼ける音……燃え上がる炎の音……焼け落ちる家屋の音……肉が……燃える……音……

 鼻につくのは……木材が焼け焦げる臭い……頭が痛む程の刺激臭……肉の……焦げる……臭い……

 目に入るのは……家屋が燃える姿……街路樹が燃え落ちる姿……天焦がす炎の姿……人の燃える……姿……

 死……炎……死……炎……死……死……炎……炎……炎……炎……死……死……死……炎……死………………

 ここは……地獄だ……と、ロングビルは思う。
 
 炎は人を燃料に燃え広がり、空は焼け焦げたかのように真っ黒だ。
 赤く紅く明く朱く緋く赫く……人を燃料に燃え上がる炎は、まるで血を思わせる赤黒い炎。

 な……何なんだい、一体……これは……何なっ――――
 
 睡魔に抗うことなく目を閉じると、何故か炎の中にロングビルはいた。
 正し……地獄の、と言う言葉がつくが。
 吐き気を催す地獄の様な……いや、地獄そのものの光景に只々呆然と立ち尽くすロングビル。
 その光景は、それなりに裏の汚い世界を見てきたロングビルであっても、直視することが出来なかった。
 死と炎のみが満ちる世界に、ロングビルは思わず叫び声を上げ――――

 はぁ――はぁ――っ――ぁ――ぁ――はっ――

 声が聞こえた……

 まだ、幼い子供の……声だ……

 っ――はぁ――っ―――――

 炎の中……十歳位の少年が歩いている。
 赤い髪が特徴的な……小さな少年が……地獄を……歩いている。

 体中に怪我を負いながらも、少年は歩き続ける。
 浮かべる表情も、その元となる感情さえも燃やされてしまったかのように、少年の顔には何の表情も浮かんではいない。
 ただ……歩き続けている…
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