第二章 風のアルビオン
幕間 炎の中の子供
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させていた士郎の姿はそこにはなく……ただ、酷く脆く、そして儚い男の姿があった。
触れれば崩れそうな雰囲気に、思わず足が止まったロングビルであったが、士郎の瞳に満ちる感情に気付くと、歩みだした。
ロングビルが初めて士郎を見たのは、士郎が召喚された次の日だった。“春の使い魔召喚の儀”で血だらけの男が召喚され、保健室に運び込まれたと聞いたロングビルは、どんな奴か見てやろうと思い、士郎が目を覚ます前に一度、保健室に向かうことにし。そこでロングビルは、白いシーツに包まれ、眠る士郎を見付けたのだ。
そう言えば、寝てる士郎は、まるで昼寝している大型犬のようだったね……
窓から差し込む春の陽気の下、鍛えぬかれた浅黒い体を真っ白なシーツに包まれ眠る士郎は、まるで昼寝中の大型犬のようだった。
あの時は、こんなことになるなんてちっとも考えもしなかったよ……
二回目は士郎が目を覚ました時。あの時は、士郎の視線の鋭さに驚いて直ぐに逃げてしまった。
シロウが目を覚ましてからは、本当に色々なことがあった……
まるで運命という歯車が回り出したかのように色々なことが。
そんな中、士郎を避けるようにしていたはずのロングビルに、士郎は何度も声を掛けてきた。
仕事を手伝ってくれたと思ったら、警告してきたり、口説く様なことを言ったかと思えば脅してきたり……まったく振り回されて大変だったよ……
そしてロングビルは、“破壊の杖”の使い方を調べるため、士郎たちを森の中へ連れていく際、馬車の上で士郎の話しを聞いた時のことを思い出し、ロングビルは自然に士郎の体に手を回す。
「馬鹿だね、あんた……」
あの時、シロウは“正義の味方”になることが夢だと語った……全てを救う“正義の味方”に……
「あんた今どんな顔してるのかわかってるのかい……? なんなんだいその顔……親とはぐれた子供じゃないんだから」
全てを救うことなど出来ないことを……誰よりも知りながらも、愚直に“正義の味方”を目指す男。男は救えなかった者達を悼み傷付く。
「だから……馬鹿なんだよ」
感情を消し、人を救うだけの“モノ”になることも出来ず、傷付きながら人を救う。
何故……だろう……
何故……この男なのだろう……
何故……
身を叩くような風が体に当たるのを気にすることなく、ロングビルは煙を上げ崩れゆくニューカッスル城を見上げていた。
「お父様……」
お父様は仇を討つこと望んではいなかった……だけど……
自分の家族だけでなく、妹同然の少女の家族の仇であるアルビオンの王が君臨していた、燃え落ちるニューカッスル城に怒りや
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