第二章 風のアルビオン
幕間 炎の中の子供
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かないと言うことでいいですね」
「イイ女って……、まあいいですけど。まあ、互いに事情を聞かないのは構いませんが、でもミス・ロングビル、ここで待っているだけっていうのは……」
「そうですか……なら」
キュルケが言い辛そうにロングビルに言うと、ロングビルは何か考えるように宙を見上げ……何かを考えついたのかの様に頷いた。
「なら、ミス・ツェルプストーたちはミスタ・グラモンの使い魔で穴を掘って、私を追いかけて来てください」
「ヴェルダンデでかい? どういうことだい?」
「たしかミスタ・グラモンの使い魔は、宝石の匂いがわかるんですよね?なら、この指輪の匂いを辿ってきてもらえますか?」
そう言うと、ロングビルは懐から、古めかしい指輪を取り出すと、キュルケたちに見せる。
ギーシュはシルフィードにくわえられて連れて来られた使い魔に振り向くと、件の使い魔はギーシュが振り向く前に既にロングビルの手にある指輪に鼻を近づけていた。
「ヴェルダンデ、さすがに宝石のことになると早いね。まあこの様子なら、大丈夫だと思うよ」
「っ! くっ、そうっ、ならそういうことでってもう邪魔だねっ! このモグラっ!」
ロングビルはぐいぐいと宝石に鼻を押し付けてくるヴェルダンデを足で押さえつけながら頷くと、最後にヴェルダンデを蹴り飛ばし、穴の奥にむかって歩き出した。
「はぁ……まさかまたここに来るとはね……」
非戦闘員が逃げ出した、人気の無いニューカッスル城の中を歩きながら、ロングビルは懐かしい思いに囚われながらも士郎を探していると、礼拝堂のほうから破壊音が聞こえてくる。
「っ! この方向、礼拝堂かい? まさか“レコン・キスタ”の攻撃が始まったのかい、それともまさか……」
ロングビルは破壊音が聞こえた礼拝堂に踵を返すと、フードで顔を隠しながら礼拝堂に向かった。
……これは……まさかあの時の
ロングビルの視界に礼拝堂が入った瞬間、過去に感じた死の恐怖を感じ、思わず足が止まり。次の瞬間目の前で礼拝堂の天井が吹き飛んだ。
「やっぱりこれはっ……っシロウ!」
ロングビルが天井の吹き飛んだ礼拝堂に飛び込むと、倒れ伏すフードを被った、メイジと思われる者達の先に、肩を落とし血に濡れた貴族を見下ろす士郎がいた。
「あ……」
ロングビルには、一時それが誰だか分からなかった。
まるで……零れ落ちそうになる涙を、必死に我慢している幼い子供の様な……
まるで……何かに疲れ果てた老人の様な……
まるで……取り返しのつかない罪を犯したことを後悔する罪人の様に……
まるで…………
常に強靭な男を感じ
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