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剣の丘に花は咲く 
第二章 風のアルビオン
幕間 炎の中の子供
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義の味方になりたかったんだ」

 ――男が呟くように話しを続ける。

「なんだよソレ? なりたかったって、今はあきらめたのかよ?」

 士郎と呼ばれた赤毛の少年は、顔に不満をありありと浮かべ、目の前の男を睨みつけている。男はそんな赤毛の少年の言葉に、哀しさと苦味が混ぜったような笑みを零す。

「うん。正義の味方はね、大人になると名乗りにくくなるものなんだ」
「ふーん……じゃあしょうがないな」

 あれ? これ……どこか、で?

 見たこともない光景に何故かロングビルが既視感を覚える。

 ロングビルが眉間に皺を寄せ考え込んでいる中。赤毛の少年は頷くと、少し考えた後、さも名案とばかりに顔を上げる。

「じゃあ、俺が正義の味方になってやるよ。それなら爺さんも安心できるだろ?」

 っ!! 正義の、味方……やっぱり……この、子は……

 少年が明るい顔で宣言する姿に、ロングビルは……目を伏せた。

 少年の言葉を聞いた男は一瞬驚いた顔になるが、すぐに笑顔になる。そして士郎の頭に手を置くと、ゆっくりとそれでいて優しく不器用に撫でた。

「そうか……いや、そうだね。士郎がなってくれるなら安心だ」

 撫でられることにくすぐったさを覚えるが、嫌な気分ではないのか、振り払うことなく撫でられるに任せている。そして何気なく隣に座る男に目を向けると、男はどこか虚ろな瞳で月を眺め。

「ああ……とても、安心した……」

 安心したように……小さく呟いた。









 ああ―――そう、か―――――
 
 段々と薄れゆく光景の中、ロングビルは理解した。何故、最初からあんなにも士郎のことが気になっていたのか……その理由がやっと分かった。
 
 シロウ……あんたの中に、まだ……いるんだね。あの地獄を一人歩む……小さな子供が……


 薄れ、消え、白く染まった空間の中、薄れいく意識を感じながら、頬を伝う流れる涙を拭うこともなく、ロングビルの両腕は何かを抱きしめるかのように自身の体にまわされていた……強く……強く……
 






 
 







 

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