at NIGHT 6th 〜希望〜
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ができたのか?
違う! できてない!
「ほんっと……中途半端だな、カッコ悪い」
結局のところ俺はただのガキだったということだ。
この世界をつまんないとか思って、刺激がないとか思って。
ガキ特有の知的好奇心を少し満たしたと思ったらあっさり死んでしまう。
ただの馬鹿野郎だ。
「それでもいいじゃない」
えっ?
どこからか懐かしい声が響いた。頭に直接語りかけてくるような優しい凛とした声はどこか懐かしい。
「馬鹿だってかまわないわ。そんなあなたを私は必要としてるの」
ああ、夏目の声だ。幻聴だろうか?
「魔術師たるもの死後の世界に意識を飛ばすことくらい簡単だと思わない?」
いやいや、簡単じゃないだろ。
でも、夏目ならできそうだ。
ふっ、と笑いがこみあげてくる。まだ出会って一日なのに心はすっかり夏目を仲間として見ているってことに気づいたから。
「それにね、まだそこは本当の『死』ではない。ふふっ意味分かんないか。とにかくね、あなたの意思さえあればまだこっちの『生きた』世界にこれるわ」
そっか。完全にはしんでないのか。じゃあ三途の川みたいな場所にいるってことか。
「生と死の狭間、そこにあるのは本物の虚無。そこに陥った者は普通その虚無に精神をすりつぶされ、自ら死を選ぶ。けれどあなたはそんなにまいってはいないでしょ? それはある種の才能よ。あなたはね、人生に達観しているの。刺激を求めることで生きる意味を作り出しているけれど、それは言い換えてしまうと、生きる目的、本能的な衝動を持っていないということ」
そして一旦こちらの反応をうかがうように夏目は言葉を切った。
――ああ、そうだ。俺に生きる目的なんて無かったんだ。すべてに諦めていた。
でもな夏目、お前は間違ってるよ。だって今俺はもう生きる目的を持っているから。
それは――――
「俺は、お前と一緒にいたい。お前がもう怪我をしなくてもいいように。――――それが、俺の願いだ」
「そんな風に思ってもらえるなんて嬉しいわ」
「だから俺はこの空間から戻りたい。どうすればいい?」
「簡単よ。そこから出るのに必要なものは希望。希望を持てばこんな空間蹴破れるに決まってる」
「そうか、オーケー。やってみる」
「頑張って。今のあなたには目標がある。それを強く心に念じていれば大丈夫」
そう言うと夏目の意識がこの虚無空間から消えたように思えた。
よーし、やってやる。元の世界に戻ってやる!
「かけがえの無い……一つの希望」
そうつぶやいて強く念じた瞬間、意識が飛んだ。
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