効率と非効率
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見事だった」
「立派な最期でしたが。生きていれば挽回の機会もあったでしょうに」
「どうかな。敵の情報を得るために拷問されていたかもしれない。死ねて良かったかもしれないな」
「まさか。捕虜の虐待は――」
「そんなもの戦死したとすればどうにでもなる」
答えたラインハルトに、キルヒアイスは眉をひそめた。
だが、否定の言葉は浮かばず、隣の金髪の少年に目を向ける。
ラインハルトは心配するなと言わんげに、笑った。
「俺はそのようなことはしない。だが、残念なことに、ここの司令官は俺ではない」
どんな人物かわかるだろうとの視線に、キルヒアイスは真剣な表情で小さく頷いた。
無駄な斥候に、細工された水素電池。
おまけに死体確認で部下まで送り込む周到ぶりだ。
とても清廉とは言えない渦巻く欲望を肌で感じている。
しかし、言外に油断をするなとの意味であろうが、仮にも命をかける軍がそこまで腐っていて欲しくないと思うのは、自分が甘いのだろうかとキルヒアイスは息を吐く。
称賛の言葉を送られながら、歩く道は――来た時とは対照的だ。
ラインハルトに向けられる視線の多くが、尊敬に満ちている。
人間など現金なものだ。本人にとっては理解していないかもしれないが、当初の嫌悪をラインハルトは忘れていない。
歓声の中をラインハルトは横目にして、歩き続けた。
浮かぶのは嫌悪でもなく、喜びでもない。
観察だ。
凡人とはそのようなものだと思いながら、その凡人を使いこなさなければならないと思う。まだ自分は弱く、ならば、例え凡人であろうと関心をかっておいて損はない。
後はどう使うかだが。
視界に入った司令官室の文字に、ラインハルトは考えを切り替えた。
+ + +
ラインハルトのみに入室が許された司令官室。
キルヒアイスを入口において、足を踏み入れれば、暑いほどの暖気がラインハルトを包んだ。他の部屋で口うるさく言われる節電という言葉は、この部屋には関係がないようだ。
一人小さく笑いながらラインハルトが足を進めれば、苦虫を噛み潰したヘルダーの姿が見える。防衛に際してのラインハルトの活躍は既に聞いているようだ。
それを真っ向から否定も出来ず、ただ苦虫を噛み締めた表情ながら、
「ご苦労だった」
と、ラインハルトの苦労をねぎらった。
「ありがとうございます」
それに対してラインハルトも形ばかりの礼を口にする。
だが、司令官室に入ったのは褒められるためではない。
すぐに顔をあげればヘルダーを真正面から見た。
「大佐。偵察時に反乱軍の基地のデータを手に入れました」
「ああ。それも聞いている。その件についてもご苦労だった。さすがだな」
さすがとの言葉に、ラインハルトは小さ
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