効率と非効率
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ても、敵が攻めるまでに全てを動かすことはできないでしょう。何より攻撃隊により過半数が壊滅した現状では、基地に残っている人数ではとても対応できません。これ以上の被害を出すよりも、すぐに撤退すべきだと思います」
「むざむざと基地を明け渡すというのか」
「現在の戦力では、敵の攻撃に対して満足な基地機能を保つのは難しいでしょう。むろんただでとはいいません。基地に爆薬を仕掛けて、敵の攻撃部隊も巻き込みます」
淡々とした言葉に、クラナフは瞳を開ける。
冗談で言っているわけではない。
ただ、それこそが効率的だと、そのために感情すらも切り捨てる。
自分のためならばと、他者を切り捨てる人間をクラナフは見てきた。
しかし、そこにはあくまでも感情があった。
だが、目の前の人間は。
遥かに下の階級の人間に、クラナフは背筋を寒くする。
この部屋は酷く寒い。
「……徒歩でこの基地に向かっている兵を見捨てるというのか」
「見捨てはしません。一時的に別の場所に姿を隠してもらい、動く装甲車で食料を運びます。そこで避難しつつ、戦闘が落ち着けば回収部隊を送ります。装甲車を基地の防衛に使えば、それも出来ません」
「その方が効率的だと、そういうのか」
「こちらに被害はなく、敵に損害を与えられ……」
「君らはいつもそうだな」
アレスの言葉は強い言葉に遮られた。
「効率だ、非効率だと現場の人間の事を分かってはいない。現に寒さに凍え、基地へと向かう兵士の気持ちなど想像もしていない。無線で別の場所に避難をすればよいと、ならば無線を持っていない兵士はどうなる。見殺しか!」
「……」
「多くを救うためには見捨てる事が正しいのだろう。だが、見捨てられた兵士の気持ちも理解してほしい」
一息に呟いて、クラナフは深い息を吐いた。
「避難はしない。この基地を救いと信じる兵士達を見捨てる事はできない――俺にはな。特務小隊にも防衛の任務についてもらう。各小隊長と話を詰めて、防衛計画を提出するように」
「……」
「命令だ。マクワイルド少尉」
「了解いたしました」
言葉に、アレスは小さく頷いて、踵を返す。
扉の前で振り返れば、厳しい表情でこちらを見るクラナフの姿があった。
ゆっくりと唇をあげる笑みの動作。
その表情に、クラナフは言葉を失った。
+ + +
「敵は撤退したか」
敵からの砲撃がなくなり、呟いたラインハルトの声に歓声があがった。
ラインハルトをたたえる声が大きくなり、彼の名前が呼ばれた。
それに対しても、ラインハルトは浮かない表情を見せる。
形ばかりに声援に答えながら、ラインハルトは脇を歩く、キルヒアイスに口を近づけた。
「窮鼠猫を噛むとは良く言ったものだな。最後の抵抗は
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